慶應義塾機関誌

 三田評論
  明治31年3月創刊(毎月1回1日発行)
   発行:慶應義塾 編集人:慶應義塾広報室長 編集・制作:慶應義塾大学出版会

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第25──三田評論 2018年4月号

   
 

慶應義塾大学病院の最寄り駅

 
慶應義塾史跡めぐり
 
   
   
 

 慶應義塾大学病院(以下、慶應病院)はJR中央線・総武緩行線の信濃町駅前にある。もちろんこれが一番のアクセスルートであるが、21世紀になって、新しい最寄り駅ができた。2002年、都営地下鉄大江戸線の開通によりオープンした国立競技場駅である。しかし、この最寄り駅はあまり知られていない。


 国立競技場駅の改札を出て左へ進み、長いエスカレーターを乗り継ぐと地上出入口(A1)に到達する。そこはもう病院のすぐ裏手という近さである。ここには有料駐車場と首都高速四号線の入口がある。その間を抜けるとJRの複々線を跨ぐ歩行者専用の橋があり、それを渡ると病院二号館と三号館の間の道に出る。病院のウェブサイトに記載されている所要時間は徒歩約五分である。


 この有料駐車場内には、不思議な雰囲気の建物がある。ちゃんぽん店の「水明亭」。営業は平日の11時から14時のみ。NHKの人気番組「ブラタモリ」で紹介されて有名になったが、一階部分は昭和初期に明治神宮外苑の休憩所として建てられたもの。戦後、「水明亭」として1962年に創業。慶應病院教職員の食事処としても賑わい、1964年の東京オリンピック時には水泳日本代表が食事をしたというエピソードも残っている。


 JRを跨ぐ歩行者専用の橋も不思議な構造になっている。外苑側は首都高の橋桁に遮られて半分以上が途切れて細くなり、車は通行できない。かなり古い橋であることはすぐにわかるが、いったいこの橋は何のために作られたのだろうか。


 歴史を紐解いてみよう。

 明治時代の日清戦争の際、陸軍は東日本の軍隊を訓練する目的で現在の外苑部分に青山練兵場を作った。中央線の前身である当時の甲武鉄道は、陸軍の依頼もあって新宿から先の都心路線の建設を南側へ寄せて練兵場への輸送も担うことになり、千駄ヶ谷から軍用引きこみ線も作られた。そして慶應病院のある場所には、部隊の駐屯地と兵器・砲弾・弾薬などを扱う倉庫が置かれた。ここから兵隊と物資を輸送するために線路を跨ぐ橋が三本作られ、今も一本だけ残っているのがこの「大番町跨線橋」だったのである。


 明治天皇の崩御後、練兵場は葬場殿となり、その後、明治天皇と昭憲皇太后を祀る明治神宮が造営された。兵営と弾薬庫の跡地は慶應義塾に払い下げられ、医学部と大学病院が建設されたのである。


 大江戸線の開通は、慶應義塾の教職員にも福音をもたらした。三田と信濃町間の移動は、代々木か秋葉原で乗り換えるか、渋滞に巻き込まれるバスを使うなど、一時間近くかかっていた。それが三田キャンパスの北側に大江戸線の赤羽橋駅が開設され、国立競技場駅との間はわずか九分で結ばれたのである。

(編集部)

 

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バックナンバー
 

 

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