夏の大学イベントとして、オープンキャンパスの告知が電車の中吊り広告で目につく季節がやってきた。このようなイベントが行われるようになったのは今から三〇年ほど前のことで、一九八八年に立命館大学が初めてオープンキャンパスという名称を使ったイベントを開催したと言われている。慶應義塾で最初に開催されたのは一九九二(平成四)年のこと。
この時代、夏に大学キャンパスを開放して受験生に来てもらうというイベントはまだ盛んではなかったが、SFCは開設直後の一九九〇年にすでにキャンパスでの説明会を数回開いていた。これを全学部揃ったイベントにし、受験生に慶應義塾を知ってもらうと同時にキャンパスを見てもらおうと考え、教務部と広報室の若手が中心となって他大学の見学に行き、二年かけてようやく企画が通ったのが一九九二年春である。失敗すれば翌年はないという決意のもと、最初の年はまず職員だけでできる企画を立案。八月二十八日、三田キャンパスの旧南校舎全体を使い「大学説明会」と称して実施した。
図書館の見学入館や演説館などの見学も企画し、来場者は千百名を超えたが、実施初年度としては、その当時では飛び抜けた記録であった。
初年度の成功を踏まえ、翌年は教員に各学部の説明を依頼した。ところが当日、台風十一号が関東を直撃。暴風雨で午後には交通機関もストップする悪条件となってしまったにも拘らず九百名を超える参加者が次々と来校した。これを知った鳥居塾長(当時)は急遽自ら会場に赴き、ずぶ濡れの受験生たちに直接声をかけてまわった。
三年目は満を持して日吉でも開催。同日、矢上でも理工学部の説明会を実施して、夏の受験生対象イベントは拡大していく。開催当初は「大学説明会」の名称で実施してきたが、一九九八年、学部の協力を得て初めて模擬講義を組み込み、「オープンキャンパス」へと名称を変更した。
一九九〇年代後半にはオープンキャンパスは一般的となり、高校側も積極的に参加するよう生徒に指導をしたことから、来訪者数は増え続けていく。二〇〇〇年には四キャンパスの合計が初めて一万人を超え、二〇〇八年頃には三田・日吉とも一日の来訪者が一万人を超えてしまい、校舎内の通行もままならないようになってしまった。そこでやむなく二〇一〇年から事前申し込み制に踏み切り、人数制限をして現在に至っている。
また、全学部対象のオープンキャンパス以外にも様々な企画を練って実施しており、中でも二〇一二年からスタートした地方出身者に限定した大学説明会はユニークで、奨学金や学生寮の説明や東京での生活の紹介、相談を重視して、好評を博している。
(編集部)
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