慶應義塾機関誌

 三田評論
  明治31年3月創刊(毎月1回1日発行)
   発行:慶應義塾 編集人:慶應義塾広報室長 編集・制作:慶應義塾大学出版会

慶應義塾の風景
三田評論表紙
2018年6月号表紙


space今月の特集spaceKEIO PHOTO REPORTspace立ち読みspace三田評論とはspace次号予告space前号紹介spaceバックナンバーspace講読方法space
  メインページ->立ち読み  
     
  新 慶應義塾豆百科    
     
 

第8──三田評論 2016年8・9月合併号

   
 

塾生皆泳

 
慶應義塾史跡めぐり
 
   
   
 

「塾生皆泳」という言葉を聞くと、「それ何?」という塾生・塾員と、「五〇m完泳できないと、夏にプールで集中授業を受けさせられたよなぁ」と懐かしがる塾員に二分されると思う。


今回は、「塾生皆泳」の歴史をひも解いてみたい。
慶應義塾の体育教育の理念は、福澤先生の「まず獣身を成して而して後に人心を養う」という言葉に尽きると思われる。 体育会水泳部が創立されたのは一九〇二年だが、それ以前も鎌倉や葉山の海で、塾生による水泳は行われていた。一九三〇年には三田・綱町に二五mのプールが竣工している。

「塾生皆泳」が活字として残っているのは、『三田評論』一九三九年十月号。「第三十七回葉山水泳部報告」と題された文章に掲載されている。同年当時の小泉信三塾長にお願いして、葉山水泳部パンフレットに書いて戴いたものとある。その冒頭で「塾生皆泳。これが私の当面の理想である。」とあり、最後に「米国の大学に能く百ヤアドを泳がざる者に学士の称号を許さぬものあるは、決して故なき事ではない。慶應義塾々生よ、皆な泳げ。諸君が大なる善行を為すべき機会は、常に意外に近く諸君の身辺に待つのである。」と結んでいる。


第二次世界大戦後、義塾に女子学生が初めて入学したのは一九四六年。その三年後の教育改革で保健体育科目四単位が必修になっている。義塾は、実技二単位を、週一回通年実施の「基本体育」と夏季または冬季に実施する集中授業「選択体育種目」各一単位と規定した。戦後の荒廃のなか、そのときの体育の授業はどういうものだったのだろう。


日吉で水泳の授業を行うにはプールが必要になる。日吉プールの建設は一九六〇年。その翌年から水泳の授業が始まる。塾生は泳力テストを受け、五〇mを泳ぎ切ることができなかった者は、選択体育種目として必ず水泳を履修しなければならなかった。そこには、自分の身を守るため、そして溺れている人を助けられる力をつけるためという、小泉信三の「塾生皆泳」への熱い思いがあったのである。


時は流れ、一九九一年六月に大学設置基準の大綱化が行われた。臨時教育審議会会長代理から大学審議会会長まで務めて、この改革を進めたのは当時の石川忠雄塾長である。設置基準の改正に伴い、一九九三年度から義塾の多くの学部で保健体育科目は必修科目ではなく選択科目となった。それとともに「塾生皆泳」という言葉は聞かれなくなっていった。しかし、今も幼稚舎の「幼稚舎皆泳」をはじめ、創立一五〇年の二〇〇八年に完成した協生館室内プールで実施されている大学の水泳にも、その精神は生きている。 (体育研究所主事 黒田修生)

line
バックナンバー
 

 

第27回
三田の東館


2018年6月号掲載

第26回
大学案内とガイドブック


2018年5月号掲載

第25回
慶應義塾大学病院の最寄り駅


2018年4月号掲載

第24回
園遊会と卒業記念品


2018年3月号掲載

第23回
出願から入学まで


2018年2月号掲載

第22回
福澤諭吉記念文明塾


2018年1月号掲載

 

第21回
世紀送迎会


2017年12月号掲載

 

第20回
メジャーリーグへの挑戦は三田の地から〜綱町グラウンド〜


2017年11月号掲載

 

第19回
山中資料センター


2017年10月号掲載

 

第18回
三田キャンパスの樹勢調査と屋外整備


2017年8月号掲載

 

第17回
オープンキャンパス


2017年7月号掲載

 

第16回
立科山荘


2017年6月号掲載

 

第15回
慶應稲荷社


2017年5月号掲載

 

第14回
グローバルラウンジ


2017年4月号掲載

 

第13回
早慶戦百周年記念碑


2017年3月号掲載

 

第12回
三田の福澤像


2017年2月号掲載

 

第11回
三田キャンパスの時計


2017年1月号掲載

 

第10回
創想館


2016年11月号掲載

 

第9回
日吉陸上競技場


2016年10月号掲載

 

第8回
塾生皆泳


2016年8・9月合併号掲載

 

 

第7回
慶應義塾外国語学校


2016年7月号掲載

 

 

第6回
慶應の水


2016年6月号掲載

 

 

第5回
『三田評論』


2016年5月号掲載

 

 

第4回
命名SFC


2016年4月号掲載

 

 

第3回
グーテンベルク聖書


2016年3月号掲載

 

 

第2回
北館


2016年2月号掲載

 

 

第1回
南校舎と植栽


2016年1月号掲載

 

 

 

 

 

 
   
   
 
 
 
     
 
TOPへ戻る
 

 

 
Copyright (C)2004-2010 Keio University Press Inc. All rights reserved.