言葉には、世界を変える力がある。 黒人として、父として、作家として――。 書くことで世界と闘い、生きのびてきたタナハシ・コーツが 暴力と希望のはざまで、「なぜ書くのか」を問いつづける魂の記録。
音とリズムにとり憑かれた少年が、 言葉に導かれ、書くことで世界とつながっていく。
奴隷制の記憶が残るアメリカ南部、 植民地支配の影が今も横たわるセネガル、 分断の続くパレスチナ。
そこに生きる人びとの声に耳を傾けながら、 タナハシ・コーツは「書くこと」の力と責任を深く問う。 世界の不条理に言葉で立ち向かうすべての書き手への渾身のメッセージ。

第1章 ジャーナリズムは贅沢品ではない 第2章 ファラオについて──セネガルを歩く 第3章 燃える十字架を掲げて──サウス・カロライナ州を歩く 第4章 巨大な夢──パレスチナを歩く
訳者による参考文献 訳者あとがき
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[著者] タナハシ・コーツ(Ta-Nehisi Coates) 1975年メリーランド州ボルチモア市で生まれる。ハワード大学(中退)を経てジャーナリズムの世界に入る。2014年の「賠償請求訴訟」(『アトランティック』誌掲載。邦訳は2020年の『僕の大統領は黒人だった』所収)で一躍脚光を浴び、数々の賞を受ける。2015年の『世界と僕のあいだに』で全米図書賞受賞、ピューリッツァー賞および全米批評家協会賞のファイナリスト。トニ・モリソンに「ジェームズ・ボールドウィン亡き後の間隙を埋めた」と評される。2016年「タイム誌の選ぶ世界で最も影響力のある100人」に選出される。『ブラックパンサー』などマーベル・コミックスの原作も手がける。現在ハワード大学教授。本書で5 冊目の著作となる。アメリカを代表するオピニオン・リーダーの一人である。
[訳者] 池田年穂(いけだ・としほ) 1950年横浜市で生まれる。慶應義塾大学名誉教授。タナハシ・コーツとティモシー・スナイダーの作品のわが国における紹介者として知られる。コーツの作品としては、『世界と僕のあいだに』と『僕の大統領は黒人だった』の翻訳を手がける。キャシー・パーク・ホン『マイナーな感情』(2024年)、カーラ・コルネホ・ヴィラヴィセンシオ『わたしは、不法移民』(2023年)、マーシ・ショア『ウクライナの夜』(2022年)といった幅広い翻訳を続けている。代表的な訳書としてスナイダー『赤い大公』(2014年)、ユエン・フォン・ウーン『生寡婦』(2003年)などが挙げられる。
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