マイナーな感情
アジア系アメリカ人のアイデンティティ
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なぜそんなに不満なんだ! あんたがたは次の白人になる存在なんだ! 白人の視線を内面化し、「模範的なマイノリティ」と言われながら マイノリティとしての存在感すらない アジア系アメリカ人の複雑な感情を克明に描き、 彼らの人間としての尊厳を取り戻す珠玉のノンフィクション。
『マイナーな感情』は2020年に刊行され、センセーションを巻き起こした。全米批評家協会賞を受賞し、ピューリッツァー賞ファイナリストにもなった。くわえて著者ホンはTIME誌の「世界で最も影響力ある100人」に選ばれている。アフリカ系アメリカ人やヒスパニックについての書物は数多いが、「不可視」の存在であるアジア系アメリカ人についてはもともと数が少ない。本書では、彼らのアイデンティティについてや、レイシズムの対象になることにどのような「マイナーな」感情を抱くかについての繊細な叙述が見られる。と同時に、アメリカという白人優位の資本主義社会から「モデルマイノリティ」たるアジア系アメリカ人に向けられる蔑視や、もっと悪いことに無視を具体例をもって描いている。著者の半生の経験を踏まえつつ、豊富な学術的知識に裏打ちされた本書は、他に類書を見ないと絶賛された傑作である。


『北海道新聞』 2025年1月19日に書評が掲載されました。評者は、野沢佳織氏(翻訳家)です。 本文はこちら
『朝日新聞』 2025年1月11日読書面(14面)に書評が掲載されました。評者は、前田健太郎氏(東京大学教授・行政学)です。 本文はこちら
『日本経済新聞』 2024年12月21日読書面(33面)に書評が掲載されました。評者は、与那原恵氏(ノンフィクション作家)です。

1 団結して 2 スタンダップ 3 白人のイノセンスの終焉 4 悪い英語 5 ある教育 6 あるアーティストの肖像 7 負い目のある者 謝辞 訳者あとがき 訳注
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
[著者] キャシー・パーク・ホン(Cathy Park Hong) 1976年ロサンゼルス市のコリアタウンで生まれる。詩人。 オーバリン大学でBA。アイオワ・ライターズ・ワークショップでMFA。サラ・ローレンス大学で教鞭をとった後、ラトガース大学教授を経て、現在UCバークレー教授。Translating Mo'um(2002年)、Dance Dance Revolution(2007年)、Engine Empire: Poems(2012年)の3冊の詩集で、ブッシュハート賞、ウィンダム・キャンベル賞などさまざまな賞を受賞。また、フルブライト・スカラシップ、グッゲンハイム・フェローシップなどいくつものフェローシップを得ている。『ザ・ニュー・リパブリック』誌のポエトリー・エディターも務めた。初めての散文作品である本書『マイナーな感情』で全米批評家協会賞を受賞、ピューリッツァー賞ファイナリスト。ホンはTIME誌が選ぶ2021年の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれている。
[訳者] 池田年穂(いけだ としほ) 1950年横浜市に生まれる。慶應義塾大学名誉教授。専門は移民論、移民文学。日系アメリカ人についての訳書も多い。 ティモシー・スナイダー、タナハシ・コーツ、ピーター・ポマランツェフらのわが国への紹介者として知られる。コーツの『世界と僕のあいだに』(2017年)、カーラ・コルネホ・ヴィラヴィセンシオの『わたしは、不法移民――ヒスパニックのアメリカ』(2023年)と本書で、アメリカのレイシズムを扱ったトリロジーとなる。マーシ・ショア『ウクライナの夜――革命と侵攻の現代史』(2022年)、スナイダー『自由なき世界』、コーツ『僕の大統領は黒人だった――バラク・オバマとアメリカの8年』(共に2020年)など幅広い翻訳を続けている。
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