1100万の見えないアメリカ人 不当な労働によって搾取され、虐げられ、精神を病む 不法移民の実情を克明に描き、 彼らの人間としての尊厳を取り戻す珠玉のノンフィクション。
全米図書賞Finalist
2016年のトランプ大統領の当選に刺激され、本書の執筆を決意した著者は、 自らも不法移民である立場を利用して、不法移民コミュニティへの旅を決行する。 スタテンアイランドで不当に搾取される日雇い労働者、 グラウンド・ゼロの清掃作業でさまざまな疾患に罹患し健康被害に苦しむ労働者、 医療の恩恵を被れず、代替医療やブードゥーといった民間宗教に走らざるをえないマイアミの不法移民、 フリントの水汚染公害で鉛中毒の子を産み苦しむ母親、 父親が国外退去となり、打ちのめされるクリーヴランドの家族、 移民の親を持つことに悩み苦しむニューヘイヴンの子どもたち、 そしてカーラ自身の物語をこれらの記録に織り交ぜながら、 彼女を数年間エクアドルに置き去りにせざるをえなかった両親の決断や彼らへの愛憎などを振り返る。
ただ克明に不法移民を取り巻く状況やそのメンタリティを描き、 個人的で深い共感を呼ぶ彼女の明晰な筆致は、 人種主義的・反移民的な思想を抱く人びとへの静かで強力な反論となっている。
『信濃毎日新聞』 2024年1月6日に書評が掲載されました。評者は、小川真利枝氏(ドキュメンタリー作家)です。
『まいにちスペイン語』 2023年12月号「Informacion」(p.122)にてご紹介いただきました。
『宮崎日日新聞』 2023年9月17日読書面(9面)「記者のしおり」に書評が掲載されました。評者は、白坂美季氏(共同通信記者)です。
はじめに
第1章 スタテンアイランド 第2章 グラウンド・ゼロ 第3章 マイアミ 第4章 フリント 第5章 クリーヴランド 第6章 ニューヘイヴン
謝 辞 訳者解説 原 註
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
【著者】 カーラ・コルネホ・ヴィラヴィセンシオ(Karla Cornejo Villavicencio) 1989年エクアドルで生まれる。4歳でアメリカに渡る。両親とともに不法移民として暮らす。10代から、音楽記事をはじめとして、新聞・雑誌に寄稿する。2011年ハーヴァード大学卒業。イェール大学大学院でアメリカンスタディーズを研究。ABD(博士号取得に必要な研究論文以外完了)。オバマ政権下でDACA取得者となる。現在はアメリカ市民権を取得済み。2010年に『デイリー・ビースト』に匿名で発表した「わたしはハーヴァード大学在学中の不法移民」が注目を集めた。2016年のトランプの大統領選出の翌日に執筆を決断した本書(自身は「クリエイティヴ・ノンフィクション」と位置づけている)は2020年の全米図書賞ノンフィクション部門のショートリストに入り、ベストセラーとなる。
【訳者】 池田年穂(いけだ としほ) 1950年横浜市生まれ。慶應義塾大学名誉教授。タナハシ・コーツやティモシー・スナイダーの作品のわが国における紹介者として知られる。移民問題や人種主義に関心が深く、訳書も数多い。タナハシ・コーツ『世界と僕のあいだに』(黒人)、アダム・シュレイガー『日系人を救った政治家ラルフ・カー』(日系移民)、ユエン・フォンウーン『生寡婦』(中国系移民)などテーマも多岐にわたる。また、2022年のマーシ・ショア『ウクライナの夜』のように、ウクライナ問題は2014年のティモシー・スナイダー『赤い大公』から継続して追求しているテーマである。
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