カール・クラウスと危機のオーストリア
世紀末・世界大戦・ファシズム
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▼オーストリア/ハプスブルク帝国の危機〜ナチスの脅威に向き合い、それを乗り越えようとした孤高の言論人、カール・クラウス(1874-1936)の思想と行動を読み解くとともに、「世紀末」「第一次世界大戦」「ファシズム」という三つの時代における、オーストリア/ウィーンの政治思想・文化的状況を浮き彫りにする。 ▼第一次大戦時には好戦的なメディアや政治家を、自らの個人評論雑誌『ファッケル』で厳しく批判したクラウス。彼は、戦争やナショナリズムにおいてメディアの果たす役割、戦争の背後にある経済的利害、総力戦であった第一次大戦の従来の戦争との質的差異を、鋭く指摘した。
▼一方、解体した帝国からオーストリア共和国に再編成されたのち、彼はナチスから独立を守る擁護者としてのオーストリア・ファシズム=ドルフス政権への支持を表明する。彼の真意はどこにあったのか? これまで一見、政治的な解釈が難しいとされてきた彼に、本書はオーストリアの真の独立、「オーストリア理念」を追求する姿勢を見いだす。
▼建築家アドルフ・ロース、精神分析家フロイトや保守思想家ラマシュとの関係なども描かれ、オーストリアの世紀末から第二次大戦前夜までの文化的・思想的状況をも浮き彫りにする、注目の一冊。
政治思想研究(発行:政治思想学会) 第17号(2017年5月)に書評(p.462)が掲載されました。評者は、細井保先生(法政大学教授)です。
図書新聞 2017年1月28日(第3288号)にて書評が掲載されました。評者は、吉野実氏(メディア史)です。
序 章 オーストリア思想史とクラウス 一 カール・クラウスとその時代 二 二つの文化対立とクラウス思想の一貫性 三 本書の構成
第1章 世紀転換期ウィーンにおける「装飾」批判とその意味 ―― カール・クラウスとアドルフ・ロース 一 はじめに ―― 唯美主義への批判者たち 二 アドルフ・ロースの「装飾」批判 三 カール・クラウスの「装飾」批判 四 おわりに ―― クラウスとロースを隔てるもの ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
高橋 義彦(たかはし よしひこ) 1983年北海道生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻後期博士課程修了。博士(法学)。慶應義塾大学・専修大学・國學院大学栃木短期大学非常勤講師。 主要著作:「エリック・フェーゲリンのウィーン ―― オーストリア第一共和国とデモクラシーの危機」(『政治思想研究』第12号、2012年)、共訳書にリチャード・タック『戦争と平和の権利 ―― 政治思想と国際秩序:グロティウスからカントまで』(風行社、2015年)、ほか。
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