▼ルカーチが「持続するもの」、「反復するもの」、「おだやかな仕事ぶり」といいあらわした市民的生活は、世紀転換期から大戦を経た1920年代、テクノロジーの進歩とさまざまな文化領域の爛熟により一気に変貌した。ハイパーインフレーションを決定打とする社会的・政治的力学の変動によって市民層は財産を奪われ、市民的生活は雪崩を打って崩壊していく。仕上げを行ったのが、経済恐慌であった。 この新しい社会への移行期に、ウェーバー、ジンメル、マンハイム、ベンヤミン、シュミット、ユンガー、アドルノらは、その社会に生きる人びとはいかに向き合ったのか。本書では有名無名の人びとの思想的営みが内在的に論じられる。ワイマール時代における人びとの経験とその崩壊を〈現代〉の始まりととらえる著者は、政治が議会を越えて市民生活と文化領域に拡散する一方で「点化」する状況を分析する。現代政治思想の問題はここにこそ潜んでいるのだ。 ▼圧倒的なボリュームによる異色の入門書!

社会思想史研究 No. 38 (2014年9月)「書評」(254頁)に書評が掲載されました。評者は川合全弘氏です。
週刊読書人 2013.12.13号 「40人アンケート 2013年の収穫」で、谷藤悦史氏(早稲田大学教授)より書評いただきました。

序論 1 知的世界の変貌 2 市民性の崩壊 (1) ――経験の貧困化 3 市民性の崩壊 (2) ――モデルネの意識 4 溶解の時代、とくに政治の拡散 5 本書の叙述形式
第一部 市民層の社会意識――現代思想の前提 第一章 「資本主義の精神」とルター派 1 ウェーバーにおける「問題の所在」 2 カルヴァン派、ルター派、カソリック 3 「資本主義の精神」――過渡期の精神 (1) 「世俗内的禁欲」の外的継承 (2) ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
蔭山 宏(かげやま ひろし) 1945年生まれ。慶應義塾大学名誉教授。法学博士。 著書に『ワイマール文化とファシズム』(みすず書房、1986年)がある。
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