崩壊の経験
現代ドイツ政治思想講義
序論 1 知的世界の変貌 2 市民性の崩壊 (1) ――経験の貧困化 3 市民性の崩壊 (2) ――モデルネの意識 4 溶解の時代、とくに政治の拡散 5 本書の叙述形式
第一部 市民層の社会意識――現代思想の前提 第一章 「資本主義の精神」とルター派 1 ウェーバーにおける「問題の所在」 2 カルヴァン派、ルター派、カソリック 3 「資本主義の精神」――過渡期の精神 (1) 「世俗内的禁欲」の外的継承 (2) 宗教的脈絡から経済的脈絡へ (3) 倫理の内容としての営利追求 4 近代的個人と職業義務の観念、ルター派 (1) 近代的個人主義の誕生 (2) 「職業義務」の観念 5 ルター派の「エートス」とドイツ (1) ルターと伝統主義 (2) エートスとしてのルター派の特徴
第二章 「文明化」と「文化」――市民層と貴族 1 「文明化」と「文化」の概念 2 「文明化」と「文化」の社会的基礎 3 宮廷社会と大学 4 社会的対立から国民的対立へ
第三章 市民層の社交形式 1 市民的社交の場としてのカフェ 2 サロンの隆盛と衰退 3 社交形式としての結社
第四章 一九世紀ドイツにおけるブルジョアジーの思想 1 一九世紀のブルジョアジーと都市の改造 2 ショースキーの「ウィーン都市改造」論 3 市民層と百貨店――ベンヤミンの視点から 4 アレントのブルジョアジー論
第五章 保守主義とロマン主義 1 近代批判の思想としてのロマン主義と保守主義 (1) ロマン主義の非政治的性格 (2) 〈近代〉への対応としての保守主義とロマン主義 (3) 後発国の自己主張としてのロマン主義 (4) 過渡期の現象としてのロマン主義 2 保守主義とロマン主義の成立 3 ロマン主義の思考様式 4 ロマン主義的「個性」の両義性 5 ロマン主義の影響と意義 6 世紀転換期以降の保守主義とロマン主義
第二部 〈崩壊〉の始まり――世紀転換期から一九二〇年代へ 第六章 「文明化」の挫折とウェーバーの宗教社会学 1 エリアスの「文明化の挫折」論 (1) 市民階級の挫折と敗北 (2) 戦士貴族の伝統 (3) 戦士貴族と学生組合 2 ウェーバーのドイツ「政治文化」批判の一断面 (1) 選挙法と民主主義 (2) 「貴族主義」の育成 (3) 「精神の貴族主義」と学生組合 3 ウェーバーにおける宗教社会学と政治 (1) 市民層と「貴族主義」 (2) 「貴族主義」と「内面的距離」 (3) 「政治家」の資質 (4) カルヴィニズムと「内面的距離」 (5) 職業人と「鉄の檻」
第七章 社会の多様化――市民層の解体と大衆の成立 1 社会の多様性の増大と一体性の崩壊 2 新しい人間像を求めて 3 大衆の誕生と一九二〇年代 4 ワイマール共和国期の諸政党と市民層 5 ティリッヒの「動態的大衆」論 6 クラカウアーのサラリーマン論 7 ユンガーの〈労働人〉論 8 「ブント」と「有機的構成態」
第八章 モダニズムの展開と社会的基礎 1 ボードレールの「モデルニテ(現代)」論 (1) 「現代生活」の「新しさ」 (2) 「意のままに再び見出された幼年期」 2 「現代性(モデルネ)」の基盤としての大都会 3 ジンメルにおける〈流行とモデルネの社会学〉 (1) ジンメルの方法 (2) 「ベルリン勧業博覧会」と「モデルネ」の意識 (3) 流行現象と「モデルネ」の意識 4 ジンメルにおける〈印象主義と表現主義〉 第九章 生と形式――経験の貧困化と大都市の精神状況 1 生と形式――日本とドイツ 2 ベンヤミンと経験の貧困化 (1) ワイマール共和国の成立 (2) 「経験の貧困化」 (3) 経験の解体とワイマール期の精神状況 (4) 状況化的思考の誕生 3 ベルリンにおける「ゼロ状況」――カネッティのベルリン体験 4 ジンメルと大都市の精神
第一〇章 ダダイズムから新即物主義の時代へ 1 諸領域の自律化論 2 「思想」?としてのダダイズム 3 ダダイズムと同時代 4 「新即物主義」の〈新しさ〉 5 精神史における〈一九二四年〉 6 エルンスト・トラー『どっこい、おいらは生きている』 7 芸術史における新しい現実 8 ルポルタージュの方法
第三部 〈崩壊〉の経験――ワイマール時代の「政治思想」 第一一章 〈ポスト・ロマン主義の世界〉と市民層――マン、ウェーバー、シュミット 1 作家の「思想」 2 作家の「良心」 3 マンと「共感」 4 マンの方法と戦争論 5 ウェーバーの「学問」論――「知的誠実」の道 6 「明晰性」への奉仕と人格的決断 7 シュミットの歴史哲学――「中立化」の追求と技術の時代 8 シュミットのロマン主義批判(1)――「機会=原因論」的精神構造 9 シュミットのロマン主義批判(2)――「イロニー」と政治
第一二章 ワイマール期の世代対立 1 〈一八九〇年代の世代〉と〈一九二〇年代の世代〉 ――「社会的モデルネ」から「美的・文化的モデルネ」への転換 2 媒介者ジンメル 3 ルカーチのジンメル論 4 アドルノのジンメル論 5 〈一九二〇年代の世代〉と〈一九三〇年代の世代〉 (1) クラカウアーと「待っている人びと」 (2) ノートの「戦後世代」(〈一九三〇年代の世代〉)論 6 〈一九三〇年代の世代〉の意識状況(1) ――学生グスタフ・ホッケの「当惑」を中心として 7 〈一九三〇年代の世代〉の意識状況(2) ――ズーアカンプの「戦後世代」論
第一三章 政治思想の諸類型――現実像との関連 1 シュミットの「政治的なもの」の概念――制度的現実と具体的現実 (1) 政治領域の独自性 (2) 「政治的なもの」の発生 2 現実イメージの社会学――マンハイムの「知識社会学」 (1) 現実的概念の多義性 (2) マンハイムの〈方法〉 3 政治思想の諸類型とその現実像 (1) 市民的自由主義の現実像 (2) 近代保守主義の現実像 (3) 社会主義の現実像 (4) 「ファシズム」の現実像 4 「ファシズム」における歴史意識の崩壊 5 「市民的自由主義」の溶解と「ファシズム」への接近
第一四章 「複製論」とメディアの世界 1 ベンヤミンの方法 2 密室性と室内――民衆性と接する場所 3 複製技術と芸術作品 (1) 活字の世界 (2) ベンヤミンの「複製論」 4 複製芸術と近代人批判 5 複製技術の時代におけるメディアと政治
第一五章 政治イメージの両極化――政治の「点化」と「溶解」 1 シュミットの方法論と点化的思考様式 (1) シュミットの方法論 (2) シュミットのロマン主義論 (3) 法学的思考における「点化」的思考様式 2 シュミットの価値哲学論と攻撃点 (1) シュミットの方法 (2) 価値哲学をめぐって (3) ウェーバーと「攻撃点」 3 シュミット理論における政治の溶解 4 ツェーラーにおける政治の溶解 5 「表現主義論争」にみられる政治の溶解の問題 (1) 表現主義と政治 (2) ルカーチの表現主義批判とブロッホ 6 ワイマール時代における〈カオスとしての現実像〉
第一六章 ワイマール時代における「保守」と「革命」 1 「保守的革命」の希求――トレルチ、マン、ホフマンスタール (1) エルンスト・トレルチとトーマス・マン (2) ホフマンスタールの「保守革命論」 2 マンハイムにおける「保守」と「革命」 3 「原初的保守主義」――ユストゥス・メーザーの思想 4 ロマン主義的保守主義の形成過程 (1) 近代保守主義成立期の社会学的状況 (2) アダム・ミュラーの思想 (3) ロマン主義、ヘーゲル、マルクス主義
第一七章 保守革命論とナチス 1 ナチズムの思想? 2 保守革命派とは? 3 社会的勢力としての保守革命派 4 ナショナルボルシェヴィズム、ナチス、共産主義運動 5 保守革命派の命運(1) ―― エルンスト・ユンガー 6 保守革命派の命運(2) ―― ハンス・ツェーラー 7 保守革命派の命運(3) ―― 「ナチス左派」
第一八章 ティリッヒの政治思想とナチ、保守革命 1 溶解からの離脱と拠点の模索 2 政治思想としての「根源」の概念 3 ティリッヒ理論と保守革命 4 ティリッヒの『社会主義的決断』の思想史的意味
第一九章 「真剣さ」の時代――シュトラウスとシュミットの「ニヒリズム」論 1 ナチズムと「真剣さ」の時代 2 シュトラウスとニヒリズムの革命 3 〈真面目〉路線の分裂と社会 4 ホッブスとシュミット――シュトラウスのシュミット論 5 〈真剣さ〉の思想――シュミットとシュトラウス 6 「真剣さの世界」と「興味深い世界」――シュミット理論の問題点
第四部 〈崩壊〉のあと――おわりに 第二〇章 教養と経験――レーヴィットとアドルノの「始まりの意識」 1 レーヴィットの生涯 2 ヘーゲル哲学における思考の前提 3 主体的に受動的であること 4 ヘーゲルの「教養」論 5 自己の忘却から超越へ 6 アドルノの方法意識と媒介 (1) 思想内容と経験内容 (2) アドルノの直接性批判の方法 (3) 認識の社会的次元 7 精神的形成物の堕落形態と経験の概念
第二一章 文化産業とテクノロジーの支配――アドルノとアンダース 1 「文化産業」の時代 2 文化産業と技術的合理化 3 アンダースの世代 4 テクノロジーと快適さの追求 5 「液状化」と「点的存在」 6 等価性の世界
後書き
文献目録 人名索引
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