「みる」ことを考える、2006年度極東証券寄附講座「生命の教養学」講義集。 ▼「生命をどう捉えるか?」の問題に対して、「見る」「観る」「診る」という3つの「みる」をキーワードとして設定し、中村桂子(JT生命誌研究館館長)、堀由紀子(新江ノ島水族館館長)、添田英津子(慶大病院移植コーディネーター)など第一線で活躍する論者を迎え、生物学、環境学、物理学、心理学、文学、医学などさまざまな立場から考察する。 本書は、日本図書館協会選定図書です。
序にかえて 中島陽子・石原あえか
“生きている”を見つめ、“生きる”を考える―生命誌の視点から 中村桂子 踊れば生命が見える 柳沢賢一郎 教養の生命学―細胞の情報伝達を見る 岡浩太郎 動物の見る世界を探る 蟻川謙太郎 錯視デザインと生命 北岡明佳 「みる」ことの生物学 中島陽子 命のつながりをみる―海と命 堀由紀子 卵を回して観ると? 下村 裕 人体観察の記録―近代ヨーロッパおよび日本における解剖図・標本・立体模型 石原あえか 移植 ……
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【編者紹介】 慶應義塾大学教養研究センター 2002年に日吉キャンパス・来往舎を拠点として開設された研究センター。時代と社会の変化に対応できる教養および教養教育にかかわる総合的な研究を企画・立案・組織し、主体的な研究活動を展開している。
中島陽子(なかじま・ようこ) 慶應義塾大学文学部教授(生物学)。1942年生まれ。理学博士(東京都立大学)。専門は発生生物学、特に棘皮動物(ウニやヒトデが属する)胚の神経系を通して動物の系統進化について研究している。文系学生を対象とした講義では、生命科学を分野外の人にどのようにわかりやすく伝えるかということと、生命科学という眼を通すと社会はどのように見えるかを伝えることに努めている。共著に『現代生命科学入門』(慶應義塾大学出版会、2001年)、『生命と自己―生命の教養学U』(慶應義塾大学出版会、2007年)など。
石原あえか(いしはら・あえか) 慶應義塾大学商学部准教授。専門は近世ドイツ文学、特にゲーテ研究。慶應義塾大学文学部卒。Ph.D.(ドイツ・ケルン大学)。2002年より現職。近著にGoethes Buch der Natur. Ein Beispiel der Rezeption naturwissenschaftlicher Erkenntnisse und Methoden in der Literatur seiner Zeit (Wu¨rzburg, Ko¨nigshausen & Neumann, 2005)、また翻訳書にH. J.クロイツァー著『ファウスト:神話と音楽』(慶應義塾大学出版会、2007年)がある。2005年、ドイツ学術交流会(DAAD)から第1回グリム兄弟奨励賞Jacob-und-Wilhelm-Grimm-Fo¨rderpreis受賞。第3回日本独文学会賞(ドイツ語論文部門:2006年)、第3回日本学術振興会賞および第3回日本学士院学術奨励賞受賞(2007年)。
【著者紹介】(掲載順) 中村桂子(なかむら・けいこ) JT生命誌研究館館長。1936年生まれ。東京大学理学部化学科卒。同大学院生物化学修了。理学博士。三菱化成生命科学研究所人間・自然研究部長、早稲田大学人間科学部教授、大阪大学連携大学院教授などを歴任。1993年〜2002年3月までJT生命誌研究館副館長。2002年4月より現職。著書に『いのち愛づる姫』(藤原書店、2007年)など。
柳沢賢一郎(やなぎさわ・けんいちろう) (株)柳沢情報科学研究所代表取締役。1944年生まれ。東京大学工学部卒業。三菱商事在籍中に同大学院経済学研究科修士課程修了。(株)三菱総合研究所に転職。情報サービス部長、ワシントン駐在員事務所長等を歴任。1997年より現職。テーマは経済・文化・文明論等。なお、2005年より多摩美術大学造形表現学部在学中。専攻は油画。著書に『IT革命 根拠なき熱狂』(講談社、2001年)など。
岡浩太郎(おか・こうたろう) 慶應義塾大学理工学部生命情報学科教授。1960年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)。富士通研究所(株)、NIHおよびウッズホール海洋生物学研究所研究員を経て、1995年慶應義塾大学理工学部機械工学科専任講師、2005年より現職。無脊椎動物神経系の可塑性、多重蛍光観察法による細胞のマルチカラーイメージング、システム生物学による生命現象の理解と制御等の研究に従事。
蟻川謙太郎(ありかわ・けんたろう) 総合研究大学院大学先導科学研究科教授。1957年生まれ。自由学園最高学部理科コース卒業。上智大学大学院生物科学専攻博士課程中退。理学博士。横浜市立大学理学部助手、助教授、教授を経て、2006年より現職。専攻は神経行動学。この間、1987-89年アメリカNIH奨励研究員、1997-2000年JSTさきがけ研究21研究者、1997年日本比較生理生化学会吉田奨励賞、2000年国際ロレアル賞奨励賞、2004年日本動物学会賞、横浜文化賞奨励賞、2005年木原記念財団学術賞受賞。著書に『生き物はどのように世界をみるか』(共著、学会出版センター、2001年)など。
北岡明佳(きたおか・あきよし) 立命館大学文学部教授。1961年生まれ。1991年筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了、教育学博士。1991年から2001年まで、財団法人東京都神経科学総合研究所(現・財団法人東京都医学研究機構・東京都神経科学総合研究所)主事研究員。ニホンザルの大脳視覚皮質の電気生理学的研究と、ヒトの知覚研究を行う。2001年から立命館大学文学部助教授、2006年より現職。現在の専門は知覚心理学。特に、錯視の実験心理学的研究と、錯視デザインの創作を得意としている。2002年に開設したHP「北岡明佳の錯視のページ」には、日本語版・英語版ともに多くのアクセス数がある。2006年、第9回ロレアル 色の科学と芸術賞の金賞を受賞。2007年、日本認知心理学会から第3回独創賞受賞。著書に、『トリック・アイズ』シリーズ(2002〜2007年、カンゼン)、『現代を読み解く心理学』(2005年、丸善)、『だまされる視覚 錯視の楽しみ方』(2007年、化学同人)がある。
堀由紀子(ほり・ゆきこ) 新江ノ島水族館館長。1940年生まれ。立教大学社会学部卒業。1974年に(株)江ノ島水族館代表取締役社長、1986年から江ノ島水族館館長。現在、学校法人立教学院理事、独立行政法人国立科学博物館評議員、独立行政法人海洋研究開発機構監事、日本ユネスコ国内委員会委員なども兼任。2005年9月、男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰。著書に『水族館のはなし』(岩波新書、1998年)、および『クラゲの水族館』監修(寺本健一郎著、研成社、1991年)。
下村 裕(しもむら・ゆたか) 慶應義塾大学法学部教授。理学博士。1989年東京大学大学院理学系研究科(物理学専攻)博士課程修了。東京大学理学部助手、慶應義塾大学法学部専任講師、同助教授を経て、2000年より現職。主な研究分野は力学。2006年より慶應義塾志木高等学校校長を兼務。著書に『ケンブリッジの卵―回る卵はなぜ立ち上がりジャンプするのか』(慶應義塾大学出版会、2007年)、『演習 力学[新訂版]』(共著、サイエンス社、2006年)がある。
添田英津子(そえだ・えつこ) 慶應義塾大学病院移植コーディネーター。1988年慶應義塾大学医学部付属厚生女子学院卒業後、同大学病院小児外科病棟に看護師として勤務。1992年、移植研修目的でボストン・ピッツバーグへ渡る。ピッツバーグ大学看護学部学士課程、デュケイン大学看護大学院修士課程卒業。1998年帰国、慶應義塾短期大学で助手を経て、2003年より慶應義塾大学病院にて専任のレシピエント移植コーディネーター(肝臓・腎臓)として活動。デュケイン大学看護大学院博士課程在学中。著書に『移植コーディネーター』(コスモトゥーワン、2004年)など。
大野 裕(おおの・ゆたか) 慶應義塾大学保健管理センター教授。1950年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、医学博士。慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室専任講師などを経て、2002年より現職。厚生労働科学研究「自殺対策のための戦略研究」地域介入研究班リーダーなどを務める。専攻は、臨床精神医学。著書に『こころが晴れるノート:うつと不安の認知療法自習帳』(創元社、2003年)、『「うつ」を治す』(PHP新書、2000年)など。
武藤浩史(むとう・ひろし) 慶應義塾大学法学部教授。1958年生まれ。慶應義塾大学卒、英国ウォリック大学Ph.D. 専門は英文化・文学。著書に『「ドラキュラ」からブンガク』(慶應義塾大学教養研究センター、2006年)、『運動+(反)成長―身体医文化論U』(共編著、慶應義塾大学出版会、2003年)、『愛と戦いのイギリス文化史 1900-1950年』(共編著、慶應義塾大学出版会、2007年)、『チャタレー夫人の恋人』(翻訳、筑摩書房、2004年)など。
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