クルアーンにおける神と人間
クルアーンの世界観の意味論
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▼井筒俊彦英文著作翻訳コレクション第二弾God and Man in the Koran (1964)の日本語訳。
▼クルアーンに示される世界の中心をなす「創造主である神」と「被造物たる人間」との関係を、意味論的に分析するという世界的にも画期的な名著を最新研究をふまえ翻訳。 井筒はまず冒頭の二章を割いて、意味論的方法とは何か、それをいかにクルアーン分析に有効かを説明し、さらに「主としての神」、「奴隷としての人間」というセム的な神人関係を土台とするクルアーン的世界観の基礎構造を概説する。 つづいて、クルアーンの中心的存在である神について、アッラーという神名とその意味領域について論じるため、前イスラーム(pre-Islamic)のジャーヒリーヤ期と呼ばれる「無道時代」のアッラーの在り方、それがユダヤ教徒やキリスト教徒との接触を通じて変容してゆく様を叙述する。
井筒の著作を特徴づける、確固たる意味論的方法およびクルアーンをクルアーンに内在する世界観で理解しようとするオリジナルなテクスト読みは、クルアーンをより詳しく理解しようとする読者のみならず、井筒読者も満足させる内容。多引されるジャーヒリーヤ詩は本書でしか出会えない逸品の作品でもある。
序
第一章 意味論とクルアーン 一 クルアーンの意味論 二 個別概念の統合 三 「基本的」意味と「連関的」意味 四 語彙と世界観(Weltanschauung)
第二章 歴史のなかに配置されたクルアーンのキー・ターム 一 通時的意味論と共時的意味論 二 クルアーンと後クルアーン諸体系
第三章 クルアーンの世界観の基本構造 一 予備考察 二 神と人間 ……
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【著者】 井筒 俊彦(いづつ としひこ) 1914年、東京都生まれ。1949年、慶應義塾大学文学部で講義「言語学概論」を開始、他にもギリシャ語、ギリシャ哲学、ロシア文学などの授業を担当した。『アラビア思想史』『神秘哲学』や『コーラン』の翻訳、英文処女著作Language and Magic などを発表。 1959年から海外に拠点を移しマギル大学やイラン王立哲学アカデミーで研究に従事、エラノス会議などで精力的に講演活動も行った。この時期は英文で研究書の執筆に専念し、God and Man in the Koran, The Concept of Belief in Islamic Theology, Sufism and Taoism などを刊行。 1979年、日本に帰国してからは日本語による著作や論文の執筆に勤しみ『イスラーム文化』『意識と本質』などの代表作を発表した。93年、死去。『井筒俊彦全集』(全12巻、別巻1、2013年−2016年)。
【監訳者】 鎌田 繁(かまだ しげる) 東京大学名誉教授、日本オリエント学会前会長。イスラーム神秘思想・シーア派研究。
【訳者】 仁子 寿晴(にご としはる) 同志社大学非常勤講師。イスラーム哲学・中国イスラーム思想。
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