匂いたつ 夢幻の 森をゆく
▼指環、花、飴、くだもの、雛、汽車、骨……作品にちりばめられた多彩なイメージを手がかりとして、神秘のミクロコスモスをひもといてゆく。第31回サントリー学芸賞受賞の著者が描く、あでやかでかぐわしき、泉鏡花の物語世界。
▼『高野聖』『歌行燈』など、幻想とロマンあふれる作品を多数世に送り出した泉鏡花(1873〜1939年)は、今日でも人気の高い作家のひとりである。本書では、幻想の魔術師・鏡花の隠された別側面――百合と宝石のごとくいきいきと輝く豊穣な世界観を明らかにする。著者の女性的な視点と筆致の冴える珠玉の本格評論。
◇目次
科学と神秘 モンスーンの国の書き手
女どうしを描く
銀河鉄道、鏡花発
明治のバイリンガル 感性の中のキリスト教
藤壺幻想
鏡花のおやつ、口うつしの夢
指環物語
鏡花と水上瀧太郎
百合は、薔薇は、撫子は
くだものエロティシズム
読点の魔法
あやかしの雛
骨の恋
泉鏡花略年譜 主要参考文献
〈鏡花〉という紙の書物――あとがきに代えて
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持田 叙子(もちだ のぶこ) 1959年生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了、國學院大學大学院博士課程単位取得退学。近代文学研究者。1995年より2000年まで『折口信夫全集』(中央公論社)の編集に携わる。全集第24〜28、32巻「解題」を共同執筆。著書に、『折口信夫 独身漂流』(人文書院、1999年)、『朝寝の荷風』(人文書院、2005年)『荷風へ、ようこそ』(慶應義塾大学出版会、2009年、第31回サントリー学芸賞)、『永井荷風の生活革命』(岩波書店、2009年)など。
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