哲学を学ぶすべての人へ。
中世哲学の研究者が、西洋哲学に入門した時に生じた違和感や、幼少年期の記憶を交えて、「自分はいかなる人間か」を問いつつ構築する、 哲学的な輝きに満ちた〈流れ〉の哲学のための試論
古代ギリシア以来、哲学は不動のものを真実在と見なし、確固不動たるものとしての実体を基礎概念とした。一方、ギリシアのヘラクレイトスは「万物流転」を説き、事物の流動性を語った。 西方の文化においても、流れは無視されてきたわけではない。息はルーフやプネウマとして重要な生命原理、精神原理であった。 本書は、哲学とは徹頭徹尾、具体性の中で展開されるもの、個と普遍が相即するものととらえる。存在論、言語論、倫理学、中動態、時間論、実体論、聖霊論などをめぐって、西洋哲学で主題化されて来なかった〈流れ〉を問う哲学試論。

序 第一章 桜の花を求めて †津軽の桜を求めて †ゴージャスな桜 †哲学が咲く頃 †存在の偶有性と〈花〉の開花 †岩木山の姿 †〈花〉と存在のエロティシズム 第二章 〈流れ〉を哲学する †〈流れ〉ということ †流れないもの †水と海と〈流れ〉 †起源としてのアルケー †〈流れ〉の哲学 第三章 水の流れに囲まれて †月山の麓 †谷に吹く風 †沈黙と自然 †自然の言葉とベンヤミン †嘆き悲しむ自然 †沈黙の響き、森の眼差し 第四章 〈流れ〉とは何か ……
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山内志朗(やまうち しろう) 1957(昭和32)年、山形県生れ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。新潟大学教授、慶應義塾大学文学部教授を経て、慶應義塾大学文学部名誉教授。専門は、中世哲学、倫理学。また、現代思想、修験道など幅広く研究活動を行う。主な著書に、『普遍論争』(平凡社ライブラリー、2008)、『誤読の哲学』(青土社、2013)、『小さな倫理学入門』(慶應義塾大学出版会、2015)、『感じるスコラ哲学』(慶應義塾大学出版会、2016)、『目的なき人生を生きる』(角川新書、2018)、『天使の記号学』(岩波書店、2001、岩波現代文庫、2019)、『ドゥルーズ 内在性の形而上学』(講談社選書メチエle livre、2021)、『わからないまま考える』(文藝春秋、2021)などがある。
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