韓国「建国」の起源を探る
三・一独立運動とナショナリズムの変遷
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「民主主義国家・韓国」は、三・一独立運動からはじまったのか?
日本・中国・米欧・ロシアを含めたグローバルな視点から独立運動の歴史的過程を丹念に描き、文在寅政権の掲げる「建国」神話を問い直す
三・一独立運動とは、1919年3月1日に日本の植民地支配からの「解放」を目指した朝鮮人らが起こした示威運動である。現在の文在寅政権は、この運動の歴史的評価をさらに高め、1919年を「民主主義国家・韓国」の「建国」年と位置づける言説を浸透させようとしている。 右派左派の衝突が激化し、歴史解釈自体が政治化するなかで、本書はあらためて三・一独立運動を中心とする独立運動史を、世界史の視点から復元する。 「建国」問題の核心・大韓民国臨時政府の樹立、第一次世界大戦において提唱された「民族自決」の影響、日本・中国・米欧・ロシアを舞台にグローバル化していく過程、北朝鮮を生み出した社会主義の可能性と南北分断に着目しつつ、独立運動をダイナミックに描くことで、分裂する歴史認識の溝を埋め、未来への新たな展望を拓こうとする。
『歴史評論』 2023年1月号(No.873)「書評」(p.92-96)に書評が掲載されました。 評者は長田彰文氏(上智大学教授)です。
『公明新聞』 2022年4月4日(5面)に書評が掲載されました。評者は木宮正史氏(東京大学教授)です。 本文はこちら
『朝日新聞』 2022年2月12日(22面)「読書面」に書評が掲載されました。評者は藤原辰史氏(京都大学准教授・食農思想史)です。 本文はこちら
はじめに
序 章 三・一革命――独立運動と変容する韓国ナショナリズム 1 大韓民国憲法・前文 2 ニューライトと建国節 3 変容する大韓民国臨時政府の歴史的位置づけ 4 「三・一革命」論の台頭とその論理 5 「三・一革命」を乗り越える
第一章 第一次世界大戦――共和制か帝政か 1 朝鮮半島から海外へ――韓国併合と武断政治 2 敵の敵は味方――ロシアとの提携と第一次世界大戦の勃発 3 対華二十一ヵ条要求――革命派中国人との提携 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
小野 容照(おの やすてる) 1982年横浜市生まれ。九州大学大学院人文科学研究院准教授。専門は朝鮮近代史。2012年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員、京都大学人文科学研究所助教を経て2017年より現職。 著書に『朝鮮独立運動と東アジア 1910-1925』(思文閣出版、2013年)、『帝国日本と朝鮮野球――憧憬とナショナリズムの隘路』(中央公論新社、2017年)、共著書に『「甲子園」の眺め方――歴史としての高校野球』(小さ子社、2018年)などがある。
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