ヴァイマル文化の芸術と教育
バウハウス・シンボル生成・陶冶
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「モデルネの美的陶冶理論」を求めて
〈芸術〉はいかに人間を形成するか。 古典的価値の崩壊、教育の大衆化に直面し、「現代(モデルネ)」に要請される「新しい人間」の創造を目指したバウハウス。 その思想と実践をつなぎ合わせ、ヴァイマル文化のなかに一つの<星座>を描き出す。
近代的価値観の崩壊により、多様な思想・文化が花開いたヴァイマル共和国時代。 バウハウスでは、芸術を媒介にした人間形成を目指す「感性教育」が試みられていた。
本書は、美を深く体験することにより身体を調和させ、共感覚を活性化させる教育を「シンボル生成」の感性教育と位置づけ考察を加えていく。 その音楽・美術・哲学・心理学・生物学が融合した学際的な姿を捉えるため、中心地であるバウハウスとハンブルク大学の教育者・研究者、そしてパウル・クレーの実践を、思想史の手法を用いて辿る。
複雑に絡まりあったヴァイマル文化の芸術教育を基礎づけているものを「モデルネの美的陶冶理論」として提示し、「人間形成(ビルドゥング)」における美の可能性を問い直す力作。

日本の教育史学(教育史学会紀要) 第64集(2021年)「図書紹介」(p.158)に紹介されました。評者は、渡邊隆信氏(神戸大学)です。
『近代教育フォーラム』 2021年(No.30)(p.180〜p.183)に書評が掲載されました。評者は池田全之氏(お茶の水女子大学基幹研究院教授)です。
モルフォロギア・ゲーテと自然科学 2020年第42号(p.129〜p.132)に書評が掲載されました。評者は木村直弘氏(岩手大学人文社会科学部人間文化課程教授)です。

序 章 美的経験・芸術経験と陶冶(人間形成) 1 十八世紀の「陶冶」構想 2 十九世紀ドイツ社会における「陶冶」 3 二十世紀ドイツ社会における「陶冶」と美的経験・芸術経験 4 本書の構成
第一章 ヴァイマル・バウハウスの音楽教師ゲルトルート・グルーノウ ――「アメリカ的なもの」と「インド的なもの」のあいだで 1 グルーノとは誰か 2 「感性調和化論」 3 「新しい人間」の形成をめぐって
第二章 グルーノウ音楽教育の理論的背景 ――「音の響き」と「色 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
眞壁 宏幹(まかべ ひろもと) 慶應義塾大学文学部教授。 専門分野:ドイツ教育思想史、陶冶理論(人間形成論)。 略 歴:1989年慶應義塾大学大学院社会学研究科教育学専攻後期博士課程単位取得退学。 主要業績:田中克佳編『「教育」を問う教育学』(分担執筆)慶應義塾大学出版会、2006年。 Über das Interesse Paul Klees an Kincherzeichungen und Kindersprache, in: Hans-Rüdiger Müller(Hrsg.), Die Aufgabe der Erinnerung in der Pädagogik, Bad Heilbrunn: Julius Klinkhardt, 2010. 東京都現代美術館編『アートと音楽、新たな共感覚を求めて』(分担執筆)フィルムアート社、2012年。『西洋教育思想史』(編著)慶應義塾大学出版会、2019年。
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