これは民主化への助走なのか?
改革開放政策が中国にもたらしたのは、富だけではない。人々の権利への目覚めも、その必然的な産物である。1990年代以降、多様な領域で繰り広げられている権利侵害に対する抵抗と要求 ―― それが維権運動である。
メディアや知識人が加わって全社会を舞台に展開されるようになった維権運動は、次第に市民の基本的権利を求め、新たな制度構築を要求する運動へと変容してきている。そこには新たな国家―社会関係と、ボトムアップ型の政治参加の実態が垣間見られる。
様々な領域における維権運動を綿密に分析し、運動が台頭するプロセスとメカニズムを解明することから、現代中国社会の変容とその政治への影響を論ずる画期的研究。

アジア研究 第63巻第1号(2017年1月)「書評」(p.112)に掲載されました。評者は唐亮氏(早稲田大学)です。
現代中国 89号、日本現代中国学会発行、特集「日中関係を考える」に書評が掲載されました。
中国研究月報 No.817、2016年3月、評者は及川淳子氏(法政大学)です。

序 章 なぜいま維権運動なのか 第一節 問題の所在 第二節 研究の対象、研究動向 一 「維権」(権利擁護)行為の出現 / 二 中国の社会運動研究の文脈と最近の動向 / 三 集合行為に関する研究動向 第三節 問題意識と分析方法 一 研究対象と問題意識 / 二 分析枠組み / 三 資料、説明変数 第四節 本書の構成と結論 一 本書の構成 / 二 本書の結論
第一部 維権の現場 第一章 中国における消費者運動の台頭とマス・メディア ―― 「王海現象 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
呉 茂松(WU Maosong) 慶應義塾大学法学部専任講師(有期) 1999年東北師範大学卒業。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。法学博士。慶應義塾大学法学研究科助教、東京大学、東海大学などの非常勤講師を経て、2014年4月より現職。専門は、現代中国論。 主な著作に、『現代中国政治外交の原点』(共著、慶應義塾大学出版会、2013年)、『陳情:中国社会の底辺から』(共著、東方書店、2012年)、『党国体制の現在:変容する社会と中国共産党の適応』(共著、慶應義塾大学出版会、2012年)、『中国共産党のサバイバル戦略』(共著、三和書籍、2012年)、『中国:基層からのガバナンス』(共著、法政大学出版局、2010年)などがある。
|