ハッピーエンドで終わらない
◎お針子、人妻、娼婦、ボヘミアンの恋、そしてさらには同性愛と近親愛。 「愛の国」の「愛のかたち」をなぞるように、最高に甘く、そして苦いフランス文学を味わいつくす。 ◎17世紀〜20世紀までの、ここに書き綴られた物語は、 フランス文学に幸福な愛が少ないということを明らかにしてくれる。 恋する女性は不幸な結末を宿命として甘受しなければならない。 女性にとって、恋は「情熱passion」であると同時に、まさしく「受難Passion」だった。 ◎7幕の舞台からなる、甘いだけではない愛とフランス文学への誘い。

まえがき
第1章 カルチエ・ラタンの恋 フロベールの一通の手紙/大学と学生の実態/グリゼットの肖像/学生とグリ ゼット/グリゼットの恋の文学的表象/永遠のグリゼット神話
第2章 ボヘミアンと女たち ボヘミアンという社会現象/バルザックの見解/ミュルジェール『ボヘミアンの生 活情景』/かりそめの恋/ボヘミアンから市民としての芸術家へ/女嫌いの文 学/芸術と愛の二律背反/独身者は社会の脅威である
第3章 恋する娼婦 ……
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小倉 孝誠(おぐら こうせい) 慶應義塾大学文学部教授。 1956年生まれ。東京大学大学院博士課程中退。パリ第4大学文学博士。専門は、近代フランス文学と文化史。著書に『近代フランスの誘惑――物語・表象・オリエント』(慶應義塾大学出版会、2006年)、『〈女らしさ〉の文化史――性・モード・風俗』(中公文庫、2006年)、『愛の情景――出会いから別れまでを読み解く』(中央公論新社、2011年)など。訳書にコルバン『音の風景』(藤原書店、1997年)、フローベール『紋切型辞典』(岩波文庫、2000年)、ユルスナール『北の古文書』(白水社、2011年)など。
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