ポエジーと科学の交感 ▼18世紀の詩人ゲーテは、ヴァイマル公国の高級官吏であり、同時に熱心な自然研究者であった。膨大な自然科学コレクションを収集・分析し、自然科学分野に関する論文も執筆したゲーテは、一方で、新しく獲得した科学の知識を積極的に彼の文学作品に応用した。ゲーテの文学作品の本当の面白さ、そして味わい深さは、「詩人にして官僚、並びに自然研究者」という職業コンビネーションから生み出されたものだと言える。逆にこのことは、ゲーテが活動した時代の自然科学の知識や背景、また政治状況を把握しないとわからない内容も多々あることを意味する。 本書では、ある時は公務ゆえ、またある時は好奇心に目を輝かせて、当時の最先端の科学に積極的に関与しながらも、決して等身大の人間の視点を失うことなく、終生、誠実に自然と対話し続けたゲーテの詩と科学の交感を描く。
サントリー学芸賞(芸術・文学部門)受賞 - 選評 - - 受賞の言葉 -
『科学する詩人 ゲーテ』(石原 あえか 著、慶應義塾大学出版会) 本書の「お礼の言葉 あとがきに代えて」をご覧いただけます。
本書は、日本図書館協会選定図書です。
序 章 詩人ゲーテのもう一つの貌 《ポエジー》と《科学》 T ようこそ、ゲーテ・ハウスへ U 西欧学術伝統におけるヒエラルキーと象徴的書物 V ルクレティウス再発見と「教訓詩」というジャンル W ニュートンの光学実験と詩人たち X ゲーテ作品における虹のモティーフ
第1章 始まりはイルム河畔の「庭の家」 ゲーテと植物学 T ヴァイマル仕官の経緯と拝領した「庭の家」 U リンネと恋する植物 V ゲーテの「原植物」 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
石原あえか(いしはら あえか) 慶應義塾大学商学部教授 慶應義塾大学大学院在学中にドイツ・ケルン大学に留学、同大でDr.phil.を取得。学位論文Makarie und das Weltall(1998)以来、一貫してゲーテと近代自然科学を研究テーマにしている。2005年にドイツ学術交流会Jacob-und-Wilhelm-Grimm-Förderpreis受賞。2005年刊行のGoethes Buch der Naturにより、第三回日本学術振興会賞および日本学士院学術奨励賞(FY2006)を受賞。本会刊行の訳書にH. J. クロイツァー著『ファウスト 神話と音楽』(2007)、M. オステン著『ファウストとホムンクルス ゲーテと近代の悪魔的速度』(2009)がある。2009年4月から1年間、Alexander von Humboldt-Stiftungの研究フェローとして、Friedrich-Schiller-Universität Jenaで研究滞在を行った。
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