ナチスからユダヤ人を守った、普通のドイツ人市民たちの勇気 ▼ナチス政権下のベルリン地下潜伏から奇跡的に生還したユダヤ人音楽家コンラート・ラテの生還記録。 主人公コンラート・ラテは、ユダヤ人としてブレスラウ(現ポーランド)に生まれ、1943年に21歳でベルリンに逃れた。ナチスの秘密警察や密告者の目をあざむきながら地下に潜伏したが、行動をともにした両親は逮捕され、アウシュヴィッツで殺害された。過酷な状況の中でも、ドイツ人市民たちの支援によって、教会オルガン奏者として生活の糧を得、指揮法を学び、戦後はドイツを去ることなく、ベルリン・バロック・オーケストラを結成。以降、数十年にわたり指揮者をつとめた。 ▼本書の著者、ペーター・シュナイダーは、ラテやその妻エレン、生還に係わった人々に綿密な取材を行い、数多くの貴重な証言を記録した。シュナイダーは、邦訳(『ザ・ジャーマン・コメディ』中央公論社、『壁を跳ぶ男』白水社)もある現代ドイツを代表する作家。 ▼ベルリンの地下潜伏生活を生きのびたユダヤ人1500人を、機知と誇りを持って助けたドイツ人たちのささやかな勇気。この知られざる「市民の勇気」にスポットをあて、個人の責任の重さを喚起する本書の刊行は、<新生>ドイツの転換点となった。
本書は、日本図書館協会選定図書です。
「正義のドイツ人」であることのむずかしさ 語るべきか、あるいは沈黙すべきか アーリア人は手を上げなさい サヴァイヴァルの学校 ゲシュタポ、現る チャンスがなければ、自分でつかめ ライナー・マリア・リルケの一文とその顛末 ベルリンへの逃亡 ここに潜伏していなさい ハラルト・ペルヒャウとベルリン - テーゲル刑務所内の〈お店〉 もぐりの生徒の教師求む ハーリッヒのトランク 両親との別れ 桟敷席と地下生活のはざまで 国防軍演奏旅行団の指揮者となる とどまるべきか、去 ……
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【著者】 ペーター・シュナイダー(作家、脚本家) ドイツの作家、評論家。1940年リューベック生まれ。フライブルク大学とミュンヘン大学で2年間ドイツ文学、哲学、歴史を学んだあと、1962年ベルリン自由大学へ移る。1960年代後半からベルリン、イタリアのトレントで、新左翼の活動家として学生運動に関わる。1972年から1990年までイタリア、アメリカ合衆国(スタンフォード、プリンストン、ハーバード)の大学で、客員教授としてドイツ文学を教え、同時に作家活動を始めた。代表作に 『壁を跳ぶ男』、『ザ・ジャーマンコメディ』、映画の脚本としては 『頭の中のナイフ』などがある。多くの中篇・長編小説を刊行している。2000年前後からはおもに文学分野に重点を移し、長編小説出版がつづいている。
【訳者】 八木輝明(やぎ てるあき) 慶應義塾大学経済学部教授。1947年生まれ。立教大学文学部卒業(1971)後、同大学院修士課程、慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。1978〜1980年までボン大学(西独)に留学。1994年より現職。ドイツ文学、語学を担当。専門分野:ドイツ近・現代文学。論文「『異質な世界』について――カロッサの戦後評価をめぐって」、「〈過去の克服〉の先にあるもの――シュリンクの短篇「割礼」を手がかりとして」など、ともに『日吉紀要/ドイツ語学・文学』に掲載。
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