森羅万象すなわち曼陀羅 熊楠はなぜ、神社合祀に抗ったのか――。 粘菌の採集から、大日如来が関係する宇宙まで、 熊楠の知と信が融合する、壮大な思想的軌跡。
明治後期、国家神道を基盤に進められた神社合祀政策。 その時、熊楠はなぜ社叢と祭祀の喪失に激しく抗したのか――。 熊楠の神社合祀反対運動は、たんなる自然保護活動ではなかった。 その抵抗の背後にあったのは、森羅万象を曼陀羅と捉える熊楠独自の世界観だった。 神社合祀反対運動の全容をあきらかにし、 西洋科学と真言密教、神智学を融合させた熊楠の思想の核心に迫る。

はじめに
序 章 南方熊楠の生涯――神社合祀反対運動とは何だったのか 第1章 明治後期の神社政策――なぜ神社合祀が推進されたのか 第2章 糸田の猿神社とり潰し事件――反対運動の動機は何だったのか 第3章 磯間の猿神社と神楽神社の合祀計画――いまだ見ぬ埋蔵品、古代人の証し 第4章 西ノ谷村における神社合祀への抗議――神社のある風景、神社からの眺望 第5章 神島の保護運動――「自然保護園」としての神島 第6章 寺田寅彦と南方熊楠――科学と神秘思想 第7章 ヘレナ・ペトロヴナ・ブラ ……
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橋爪博幸(はしづめ・ひろゆき)1970年、群馬県生まれ。 桐生大学短期大学部アート・デザイン学科教授。 人間・環境学博士(京都大学)。南方熊楠研究会の機関誌『熊楠研究』編集委員。 著書に『南方熊楠と「事の学」』(鳥影社、2005年)、論文に「大正時代における『耳塚』論争――南方熊楠、柳田國男、寺石正路、三者のやりとりを中心に」(The Journal for the Study of Humans and Cultures、No.16、韓国・東義大学校、2010年)、「『一者なる者』との邂逅――マイスター・エックハルトの説教と南方熊楠の土宜法龍宛て書簡にみられる類似事項に関する考察」(『熊楠研究』第17号、南方熊楠研究会編、2023年)などがある。
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