ドラッグの誕生
一九世紀フランスの〈犯罪・狂気・病〉
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今なお闊歩する〈正常〉の亡霊
なぜ、それまで医薬品であった大麻・阿片・モルヒネは〈ドラッグ〉となったのか。 彼らに〈逸脱者〉の烙印を押したのは誰か。 一九世紀フランスの社会病理を読み解き、現在に至る〈排除〉の起源を探る。
一九二五年、ジュネーヴ条約によって「危険薬物」が定義・規制され、薬物使用者は犯罪者となった。 〈ドラッグの誕生〉である。
我々はここで問いを発しなければならない。 なぜ、逸脱化と排除は起こるのか。 その裏側に隠された〈正常〉とは何か――。
近代社会に導入された公衆衛生の概念と、 進歩史観に基づく国家計画の下、 薬物中毒者が社会的逸脱を経て犯罪者となっていく過程を鮮やかに描き出す。
『社会学評論』 vol.73 No.3(2022年12月号、p.276-277)に書評が掲載されました。評者は、荻野昌弘氏(関西学院大学社会学部教授)です。
ソシオロジ(社会学研究会) No.200(第65巻3号・2021年2月)に書評が掲載されました。評者は佐藤哲彦氏(関西学院大学社会学部教授)です。
現代の社会病理(日本社会病理学会) 第35号(2020年10月)「書評」(p.154-155)に書評が掲載されました。評者は、本田宏治氏(東洋大学)です。
序 章 薬物問題の三つの位相
第1章 阿片と公衆衛生 1 阿片――医薬品か毒物か 2 フランスにおける阿片規制と公衆衛生 3 二重の病理としての阿片中毒 4 正常性と未来指向性
第2章 大麻と精神疾患 1 《ハシッシュ倶楽部》 2 『ハシッシュと精神疾患』 3 二元論の超克 4 夢と幻覚
第3章 モルヒネ中毒と法医学 1 モルヒネと医療 2 モルヒネ中毒と犯罪 3 半−責任能力と「情念」 4 モルヒネ中毒者の潜在的犯罪性
第 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
渡邊 拓也(わたなべ たくや) 1974年生まれ。2012年、フランス国立社会科学高等研究院(EHESS-Paris)修了。Ph.D(歴史学)。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。博士(文学)。現在、大谷大学社会学部准教授。著作に、『せめぎ合う親密と公共——中間圏というアリーナ』(秋津元輝・渡邊拓也編、京都大学学術出版会、2017年)など。訳書に『教えてルモアンヌ先生、精神科医はいったい何の役に立つのですか?』(P・ルモアンヌ著、新泉社、2016年)、『うつ病——回復に向けた対話』(P・H・ケレール著、共訳、白水社、2017年)、『100語ではじめる社会学』(S・ポーガム編著、共訳、白水社、2019年)などがある。
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