インドネシア国家と西カリマンタン華人
「辺境」からのナショナリズム形成
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▼ふたつの国家に翻弄された西カリマンタン華人の60年の歴史を辿る 本書が対象とするのは、インドネシアの一地域ではあるが、ジャワ島やバリ島といった比較的知られた地域ではなく、カリマンタン島西部という、いわば「辺境」である。西カリマンタンは、インドネシア国家とどのような関わりを持ってきたのか。 この地域は元来、インドネシアのナショナリズムの中心であったジャワ島とは全く異なる歴史的背景を持つ。そのような別個の社会がインドネシアという国家の一部になっていく過程は波乱に満ちたものであった。 またこの地域に暮らす華人たちは、インドネシアと中国というふたつの国家に翻弄されてきた。その60年の歩みを辿り「辺境」に暮らす民衆の視点から歴史を考える。
東南アジア研究 56巻1号(2018年7月)(p.113〜p.115)に書評が掲載されました。評者は貞好康志氏(神戸大学大学院国際文化学研究科)です。
はじめに
序章 1 主題――本書の視角 (1) フロンティアとしてのカリマンタン島、「辺境」について (2) インドネシアという国家 (3) 国家編成の過程 (4) 華人の「辺境性」 (5) 「辺境」を研究する意義 (6) 本書の主題 2 先行研究 (1) ナショナリズム研究 (2) 東南アジアの華僑華人研究 (3) 華僑華人研究の展開 (4) 西カリマンタン華人に即した研究 (5) 「辺境」からの視点 3 インドネシアの華人社会 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
松村智雄(まつむら としお) 早稲田大学アジア太平洋研究センター助手。 2006年東京大学教養学部卒業、2008年同大学大学院総合文化研究科修士課程修了、2013年同博士課程修了。専門は東南アジア地域研究(主なフィールドはインドネシア)、華人研究、移民研究。 主要業績:「真正のインドネシア人 Indonesia Asli」とは誰か?――2006年国籍法の制定過程と同法の革新性」『アジア地域文化研究』第6号(2010年)、「インドネシアにおける国籍法(1958年)施行課程における華人の反応――中国語紙の分析から」『南方文化』第38号(2011年)、「インドネシア西カリマンタンにおける1967年華人追放事件の経緯」『アジア地域文化研究』第8号(2012年)、「1967年「ダヤク示威行動」におけるインドネシア西カリマンタン州ダヤク社会のポリティクス」『東南アジア 歴史と文化』第44号(2015年)、“Merantau:Chinese from West Kalimantan Pursuing Success in Pasar Tanah Abang in Jakarta,”Kurasawa Akiko and William Bradley Horton(eds.) Consuming Indonesia, Jakarta: Gramedia(2015年)、“Gagalnya Perjuangan Kemerdekaan Sarawak dan G30S,”Kurasawa Akiko and Matsumura Toshio(eds.) G30S dan Asia: Dalam Bayang-bayang Perang Dingin, Jakarta: Penerbit Buku Kompas(「サラワク独立闘争の失敗と9・30事件」倉沢愛子・松村智雄編著『9・30事件とアジア――冷戦の陰で』、ジャカルタ:コンパス出版社)(2016年)ほか。
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