(1) 教育史の全体的な推移を、〈習俗としての教育〉〈組織としての教育〉〈制度としての教育〉という三つの段階を通して捕捉するという、独自の教育史像を提示している。 (2) 〈制度としての教育〉が「国家による国民形成」として推し進められている様態を「近代教育」としてとらえ、「近代教育」をめぐる諸問題を日本の事例を通して考察している。 (3) 「国家による国民形成」を教育の基本型と見なす発想を相対化し、それを克服するためのオルターナティブとして「個々人の生の充実」という視点を打ち出している。 (4) 「近代教育」が発足・確立した明治以降を中心とする、古代から現代までの日本の教育の歴史を、この1冊で概観することができる。


はじめに―― 本書の前提となる諸問題 (1) 「教育」の含意について (2) 「教育史」叙述の射程について (3) 教育史学における学問的関心の所在について (4) 教育史研究の意義・目的について
第一章 「組織としての教育」の胎動と進展―― 古代・中世 一. 古代における教育の組織化動向 文字学習と古代の教育組織 庶民階層の教育 二. 中世における教育の組織化動向 中世社会と文字学習 往来物の普及 ……
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山本正身(やまもと まさみ) 略歴:1956年生まれ。1987年慶應義塾大学大学院社会学研究科教育学専攻博士課程単位取得退学。博士(教育学)。現在、慶應義塾大学文学部教授。 専攻:日本教育史、近世教育思想史 主要著作:『仁斎学の教育思想史的研究――近世教育思想の思惟構造とその思想史的展開』(慶應義塾大学出版会、2010年)、『アジアにおける「知の伝達」の伝統と系譜』(編著、慶應義塾大学言語文化研究所、2012年)、『人物で見る日本の教育』(共著、ミネルヴァ書房、2012年)、『アジアの文人が見た民衆とその文化』(共著、慶應義塾大学言語文化研究所、2010年)、『教育思想史』(共著、有斐閣、2009年)、 “Corners of the Mind―Classical Traditions, East and West” (共著、慶應義塾大学出版会、2007年)、『「教育」を問う教育学――教育への視角とアプローチ』(共著、慶應義塾大学出版会、2006年)、J. シャロン『死と西洋思想』(共訳、行人社、1999年)、ほか。
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