「哲学再発見」 哲学の古典や日常の経験を超えて真理を探しに行こう
「哲学」を学ぶ学生が、「哲学」と「科学哲学」を別物と考え、「科学哲学」を敬遠するのは哲学にとって実に不幸なことである。 ギリシャ以来の哲学史をすなおに振り返ってみよう。幾何学が大好きだったプラトン、数学を言葉として使って運動を分析したガリレオ。デカルトは解析幾何学を生み出し、幾何学の代数化を目論んだ。ニュートンの『プリンキピア』の邦題は『自然哲学の数学的原理』である。 古来、哲学は、数学や物理学と結びつき、それらを研究し使用する学問だった。現代の哲学はこれを忘れてしまったのだろうか。 17世紀に科学革命が起こり、実証的な科学が哲学から独立した。 そして21世紀に入り科学の役割はますます増大するばかりである。哲学と訣別したかにみえた科学に対して、科学だけでは解けない原理的な問題(例えば量子力学、生命や遺伝など)が意識され、それを解決するという使命が、科学哲学に与えられた。 再生される哲学がとるべき選択の一つが科学哲学なのである。
本書の特徴―論文とディスカッション 論文: @文系の学生でも理系の主題について「哲学する」ことを、論文の読解を通して学ぶことができる。 A本書に掲載されている論文は、いずれも、科学哲学において今日、議論されることの多いテーマを扱っている。読者は科学哲学の代表的な問題のいくつかに触れることができる。 ディスカッション: B各論文のおわりには、論文についての質問、著者による解答、論文をめぐる議論を「ディスカッション」として掲載してある。科学哲学のディスカッションを通して、読者は論文への理解を深め、哲学する姿勢を実践的に知ることができる。

序 章 科学哲学を学ぶために 西脇与作 1. 哲学が問題にしてきた事柄を科学の観点から見返すと…… : あるいは、20世紀以前の哲学を科学哲学的に見直すと 2. 20世紀初頭の科学的な哲学の動向はどうだったのか…… : 現在から振り返ってみれば 3. 現在の科学哲学にはどのような分野があり、その現状は…… : 科学哲学の現在 4. 各論文の内容について:それぞれの主張と特徴は何か 5 .各論文を読みこなし、科学哲学の将来を見据えよう 6. 参 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
(掲載順) 【編著者】 西脇与作(にしわき よさく) 〔序章執筆〕 慶應義塾大学名誉教授。 専門:科学哲学 『現代哲学入門』(単著)慶應義塾大学出版会、2002年。『科学の哲学』(単著)慶應義塾大学出版会、2004年。「モデルが訴えるもの」、三田哲学会編『自省する知』、慶應義塾大学出版会、2011年。
【著者】 源河 亨(げんか とおる) 〔第1章執筆〕 慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程在籍、慶應義塾大学大学院文学研究科非常勤助教(有期・研究奨励)。 専門:知覚の哲学、心の哲学 『進化の弟子−ヒトが人間になるまで』(共訳)勁草書房、2013年。「知覚はどれだけのものを捉えられるか」、『哲学』130集、慶應義塾大学三田哲学会、2013年。「音の不在の知覚」、『科学基礎論研究』、科学基礎論学会(印刷中)。
古賀聖人(こが まさと) 〔第2章執筆〕 慶應義塾大学文学部非常勤講師。 専門:心の哲学、知識の哲学 「色の自然主義的理解」、『哲学』第113集、慶應義塾大学三田哲学会、2005年。「“少数の法則”を補足する説明の妥当性の検討−生成過程の違いによる説明と結果予測の成否による説明」、『人間と社会の探求−慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要』66号、2008年(共著論文)。「合理的非合理性と経験的知識」科学基礎論学会、2013年(学会発表)。
田中泉吏(たなか せんじ) 〔第3章執筆〕 慶應義塾大学訪問研究員、慶應義塾大学文学部非常勤講師、立教大学兼任講師。 博士(哲学)。 専門:科学哲学 『ダーウィンと進化論の哲学』(共著)勁草書房、2011年。「微生物と本質主義−種カテゴリーに関する恒常的性質クラスター説の批判的検討−」、『科学基礎論研究』40巻1号、2012年。『進化の弟子−ヒトが人間になるまで』(共訳)勁草書房、2013年。
石田 知子(いしだ ともこ) 〔第4章執筆〕 慶應義塾大学通信教育部非常勤講師。 専門:科学哲学 「研究公正局」、「純粋科学と応用科学」、『科学・技術・倫理百科事典』(共訳)丸善出版、2012年。「基礎的物理学は生物学を消去するか−分子生物学的説明についての考察から」、『哲学』131集、慶應義塾大学三田哲学会、2013年。“Genetic Information as a Conceptual Metaphor” International Society for the History, Philosophy, and Social Studies of Biology, 2013(学会発表)。
森元良太(もりもと りょうた) 〔第5章執筆〕 慶應義塾大学文学部非常勤講師ほか。 専門:科学哲学、生物学の哲学、確率論の哲学 『進化論の射程』(共訳)春秋社、2009年。『進化論はなぜ哲学の問題になるのか』(共著)勁草書房、2010年。『ダーウィンと進化論の哲学』(共著)勁草書房、2011年。
杉尾 一(すぎお はじめ) 〔第6章執筆〕 慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程在籍、日本学術振興会特別研究員。 専門:科学哲学、物理学の哲学 「アメリカ科学者連盟」、『科学・技術・倫理百科事典』(共訳)丸善出版、2012年。「量子力学をどのように解釈してきたか−思想史的観点にもとづく研究」、『比較文化研究』2012年。「認識の体系としての物理学」、『物理学基礎論研究会会誌2013』2013年。
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