▼はたして、倫理的な戦争などというものが、あるのだろうか。あるいは、「善」なる目的を掲げ、戦争によって「正義」を実現することは可能だろうか。国家主権の境界線を越えて、人権の問題、道徳の問題、倫理の問題を問うことは可能であろうか。 ▼イギリスのブレア首相は大きな国際的秩序の構想を掲げて米欧の間をつなごうと試みたが、イラク戦争をめぐって自らの構想と戦略において大きく躓き、自らの政治的名声を損ねることになった。 ▼ブレアが苦悩し、真剣に直視したこれらの難しい問題こそ、21世紀の国際政治を考える上で中心的な課題であり、本書では、ブレアが外交を指導したこの十年間を振り返って、その意味を再検討する。 ▼多くの公開資料をふまえた外交史家の広い視野からの考察と、いきいきとした筆致が最後まで一気に読ませる、渾身の大著。
本書は、日本図書館協会選定図書です。
第11回「読売・吉野作造賞」に 「倫理的な戦争――トニー・ブレアの栄光と挫折」(細谷 雄一 著) が選ばれました。
はじめに
序章 新しい世界の新しい戦略
第T部 戦略の革新へ 第一章 ブレア労働党政権の外交理念 一 新しい政治指導者の誕生 二 ロビン・クック外相と「倫理的対外政策」 三 「ブレア・ドクトリン」 ――「国際コミュニティ」のドクトリン
第二章 新しい安全保障戦略――冷戦後の防衛政策とSDR 一 冷戦後世界における防衛政策の転換 二 ブレア労働党政権とSDR 三 「防衛外交」任務の導入――外交と軍事の総合 四 「危機管理」任務のための防 ……
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細谷雄一(ほそや ゆういち) 慶應義塾大学法学部准教授。1971年生まれ。 慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。
主要著作に、『戦後国際秩序とイギリス外交』(創文社、2001年、サントリー学芸賞)、『外交による平和』(有斐閣、2005年、政治研究櫻田會奨励賞)、『大英帝国の外交官』(筑摩書房、2005年)、 『外交―多文明時代の対話と交渉』(有斐閣、2007年)、(編著)『イギリスとヨーロッパ―孤立と統合の二百年』(勁草書房、2009年)、(共著)『新版・ヨーロッパ国際関係史』(有斐閣、2008年)、ほか。
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