No.1237(2019年10月号)
特集
No.1237(2019年10月号)
特集
三田評論
2019年10月号表紙
サリンジャー『ライ麦畑』の一行目「もし君が」の「君」は、この本を読んでいる「僕」のことだとは衝撃だった(三人閑談)。「僕」の内面にいきなり突き刺さる「異人」の声。このテーマは本号の随所に散布されていないか。鳥居元塾長は、義塾に初めてコンピューターを導入した(清家篤)。文系の筆者の記憶でも、この時の違和と感動は生々しい。「一つの地域の問題を、その地域だけで理解してはいけない」という指摘もまさにそれだ(小熊英二、執筆ノート)。クラシック音楽は、東日本大震災以降、「精神的必需品」になった、という述懐も(林田直樹、丘の上)。そして、以上すべてが、特集「裁判員制度10年」に収斂している。特集はこれにまつわる論議や問題を尽くしてあますところがない。サリンジャー風に言い換えれば「もし君が裁判員になったら」の話なのだ。だがアマチュアでも、裁判員もまた人生の「専門家」であることに変わりはない。
鷲見洋一
裁判員制度が施行されてから10年がたち、日本の刑事裁判はどのように変わったのでしょうか。一般国民が裁判官とともに評議を行い、人を裁くことに関わるという、日本で初めての試みを検証します。裁判員を経験したことへの満足度が96%に達する一方、辞退率は増加傾向にあり、今後の課題についても考えていく特集です。
檜原麻希さん
ニッポン放送代表取締役社長・塾員
インタビュアー:池上真之(サクラス代表取締役、グロービス経営大学院客員准教授・塾員)
ラジオの在京キー局としてはじめての女性社長となった、ニッポン放送の檜原さん。デジタル化以降、ある意味ではテレビよりも先進的な試みを続けている「古くて新しいメディア」であるラジオ局をどのように引っ張っていくのか。「いつでもどこでも聞けるラジオ」の時代に、その抱負を伺いました。
若い頃、『ライ麦畑でつかまえて』に心を「つかまえ」られた方も多いのではないかと思います。刊行から約70年、なお日本の最新アニメ映画に登場するその作品は、アメリカで、そして日本で熱狂と批判の中で迎えられ、読み続けられてきた珍しい小説と言えるでしょう。その長い隠遁生活とあいまって不思議な魅力を放つ作家・サリンジャーを若い世代の論者も交えて語ります。
母校を思う塾員と篤志家の皆様により、義塾の教育研究活動を財政支援する目的で設立された1世紀余の歴史を有する組織です。
会員の皆様にはご加入期間『三田評論』を贈呈いたします。