ハウジング・バイ・ピープル
〈居住の自律〉を取り戻す
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・スラムの関係的価値に住宅所有の創造的泉源を見る古典的名著、待望の邦訳。 ・画一的な住宅政策に異を唱え、生存環境としての住まいを問い直す。 ・空き家問題、災害住宅……居住の危機を乗り越える「セルフヘルプ」の提言。
途上国都市の「建てる自由」に〈居住の自律〉本来の姿を見出した建築家ジョン・F・C・ターナー。 急速な都市化が進む1970年代、住宅とは何かではなく、「住宅は何をもたらすか」を問い続け、独自の住宅哲学を深めた。 中央集権的な住宅政策の矛盾を鋭く見抜き、立ち退きに翻弄される人々の姿に住宅保持の切実さを訴えた古典的名著、2万字を超える訳者解題を付し待望の邦訳。

序文(コリン・ウォード)
第1章 だれが決めるのか──中心的な課題 開発の蜃気楼/自律(オートノミー)と他律(ヘテロノミー)/ネットワーク構造と階層構造
第2章 資源の汚染──組織、資源の利用 予測と現実の不一致/地域や個人の声が届きにくい大規模組織/不経済と機能不全/オルタナティブの必要性
第3章 住宅の価値 住宅は何をするのか、住宅は何なのか/生活の支えとなる小屋/生活を圧迫する住宅/住宅の価値という課題/住宅問題を提起し直す ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
[著者] ジョン・F・C・ターナー(John Francis Charlewood Turner) 1927年ロンドン生まれ。AAスクールで学んだ後、1957年よりペルーに滞在。不法占拠居住地が都市周縁部で急拡大する状況下、同地で8年にわたり住宅政策に携わる。1965年アメリカに移り、2年間ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)の共同都市研究センターで研究に従事。その後、1970〜71年米国住宅都市開発省のプロジェクトで〈セルフヘルプ住宅〉の評価を実施。翌72年には、この成果をもとに「Freedom to Build: Dweller Control of the Housing Process(建てる自由、未邦訳)」を出版した。1973年にロンドンへ戻り、AAスクールと同学の開発計画ユニットおよびユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで1983年まで教鞭をとった。1976年本書に示された提言が、同年の第1回国連人間居住計画会議で支持を集め、国連や世界銀行の途上国住宅政策に強い影響力をもった。2023年逝去。
[訳者] 岡部明子(おかべ・あきこ) 東京大学大学院工学系研究科教授 1985年東京大学工学部建築学科卒業。磯崎新アトリエを経て、1989年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。博士(環境学)。千葉大学教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授などを経て、2025年より現職。2009年より千葉県館山市で継続的に既存建物に介入する〈かやぶき民家ゴンジロウプロジェクト〉を行う他、ジャカルタ(インドネシア)中心部のスラムをフィールドに、住民主体でセルフビルドによる環境改善を目指すプロジェクトを実施。著書に『バルセロナ─地中海都市の歴史と文化』(中公新書、2010年)、『住まいから問うシェアの未来─所有しえないもののシェアが、社会を変える』(共著、学芸出版社、2021年)他。
両川厚輝(りょうかわ・あつき) 1993年長野県生まれ。2023年東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程満期退学。在学中に南米エクアドルやコロンビアのインフォーマル地区において、被災地の生活再建や住民参加型の建築プロジェクトに携わる。
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