接触8割削減の科学的根拠を問う
「百年に一度の災禍」に向かい、社会経済活動を大幅に止める未曾有の対応をとった政策過程の検証は、まだ十分ではない。 医学以外の専門的知見が政策決定に反映しにくい構造の歪みを指摘。社会経済活動とのバランスをとる対策の在り方を、経済学者が経済学的視点から解説する。次の危機に備えてわれわれが知るべきことを明らかにする注目の一書!
科学的根拠に基づく政策形成は、どの程度の合理性をもって行われたのか。 コロナ禍における日本の政策対応を、EBPM(合理的根拠に基づく政策形成)の視点・経済学の二側面から検証。 医療政策の構造的な歪みや不確実な数理モデルを無批判に受け入れた政策決定プロセス、費用対効果の検証の軽視などの問題点を鋭く指摘し、感染症対策と経済活動のバランスを再考する知見を提示する。 対コロナ政策への、経済学からのメッセージ。
「コロナ」はまだ完全に終息してはいない! 次の波がやってきたときに、果たしてわれわれは、今回の経験を活かして、うまく対応できるのか――この問いに対して本書は説得力のある指針を明示する。 本書は著名な経済学者の初の単著。医療経済学会会長を務めた経験も踏まえ、現場と理論の両面に精通した著者だからこそ書ける、得心の内容!


『毎日新聞』 2025年6月28日読書面(10面)に書評が掲載されました。評者は大竹文雄氏(大阪大学特任教授・経済学)です。

序 章 われわれは合理的に対応したのか 日本のコロナ対策/本書の構成
第T部 EBPM の視点
第1章 「接触8割削減」の科学的根拠 緊急事態宣言の発出/感染者と新規感染者の混同/科学的助言の影響の評価
第2章 「接触8割削減」の代替案の説明 接触削減割合の選択肢の説明/説明の問題点/科学的助言のあり方
第3章 「接触8割削減」の検証可能性 検証の必要性/社会実装の課題/モデルの検証の課題/検証作業(期中評価、事後評価)
第4章 基本再生産数の変更 未知 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
岩本康志(いわもと・やすし) 1961年生まれ。84年京都大学経済学部卒業。87年大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程退学、91年大阪大学経済学博士。大阪大学社会経済研究所助手、同大学経済学部講師、京都大学経済研究所助教授、一橋大学大学院経済学研究科教授を経て、2005年より東京大学大学院経済学研究科教授・公共政策大学院教授。この間、日本学術会議会員、国立国会図書館専門調査員、日本経済学会理事、日本財政学会常任理事、医療経済学会理事、同会長等を歴任。2008年日本経済学会・石川賞受賞。 主な業績に『社会福祉と家族の経済学』(編著、東洋経済新報社、NIRA大来政策研究賞受賞)、『健康政策の経済分析』(共著、東京大学出版会、日経・経済図書文化賞受賞)、『財政論』(共著、培風館)など。
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