「生」をめぐる帝国の権力を可視化する
植民地朝鮮において産婆や胎教がいかに存在し機能したのか。 朝鮮社会の葛藤を、新聞・雑誌などの言説空間に注目して浮かび上がらせる力作。
日本統治下にあった20世紀前半の朝鮮における「出産の場」、とくに産婆や胎教がどのように機能していたか、言説分析を通して明らかにする。「出産」をめぐって日本人の役人、医師、朝鮮人産婆、優生学者などが、新聞・雑誌でさまざまな言説を展開した。「近代の知」が旧弊の「風習」とときに対立し、ときに協力関係を結ぶといった複雑なせめぎあいがあったことを実証的に論じ、出産する女性をとりまく様相を起点に「歴史叙述を女性へ取り戻す」ことを試る。


序章 「出産の場」と「生政治」 1 研究背景――産婆と胎教の位置づけ 2 研究方法──フーコーの「生政治」と「言説」、そして〈現実〉 3 研究史──「出産の場」を支える四つの柱 4 研究目的──植民地朝鮮の「出産の場」を解明する 5 本書の構成 6 本書における用語と記号の定義
第一部 出産風習と産婆制度
第一章 植民地朝鮮における出産風習と産婆養成政策 はじめに 1 近代日本の産婆制度と植民地への移植 2 朝鮮の出産風習 3 日本人衛 ……
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扈素妍(ホ・ソヨン) 京都大学大学文書館特定助教。 2011年ソウル市立大学人文学部国史学科卒業。2016年京都大学大学院文学研究科歴史文化学専攻日本史専修修了。2021年京都大学大学院文学研究科歴史文化学専攻日本史専修研究指導認定退学。2023年同大学院同研究科博士号(文学)取得。奈良文化財研究所企画調整部アソシエイトフェローを経て、現在に至る。 主要論文に、「植民地朝鮮の出産風習としての胎教と生政治――「優生学」言説を中心に」(『朝鮮学報』第260巻、2022年)、「植民地朝鮮における出産風習と産婆養成政策」(『史林』第103巻第5号、2020年)など。
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