階級闘争とは何か、覇権主義とは何か 中間層の動向や税制・社会保障政策が政権交代に与える影響、米中覇権争いと経済の再ブロック化の意味など、具体的・今日的課題を取り上げ、精緻な数理モデルを用いて新たな視角と知見を提供する。現代に呼吸するマルクス経済学の最前線へ!
本書が扱う問題は,「経済的土台」での階級関係が「政治的上部構造」にどのような影響を与え,また反作用を受けるか,というものに尽きる。たとえば,被搾取階級たる労働者階級が資本家階級との間に持つ経済的利害関係が社会運動を含む政治状況をどう規定するか,その際,両階級の中間に位置する諸階級がどう反応するか,独自の運動法則を持つ「政治家」がこれら諸階級の利害をどのように代弁し,よって現実経済にどのような影響を及ぼすか,というようなものである。また,このような経済・政治間の相互関係は諸国家間にもあり,マルクス主義は「帝国主義」としてそれを論じた。

はしがき
第T部 階級闘争の個人合理的条件と実現可能性
第1章 個人合理性に基づく社会運動の数理モデル はじめに 2人ゲームによる被支配階級団結の条件分析 N 人ゲームにおける囚人のジレンマ、チキンゲーム、非問題状況 大集団が団結しにくいという問題について
第2章 社会運動モデルに多数決政治を組み込んだ場合 はじめに 社会的最適解と運動参加者、フリーライダーの利害関係 多数決政治 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
【編著者】 大西 広(おおにし ひろし) [編者,第1,2,4,5,10,11章執筆,第12,13章共同執筆] 慶應義塾大学経済学部教授,経済学博士(京都大学) 主要業績に『マルクス経済学(第3版)』(慶應義塾大学出版会,2020年),『長期法則とマルクス主義――右翼,左翼,マルクス主義』(花伝社,2018年)、『「政策科学」と統計的認識論』(昭和堂,1989年),『環太平洋諸国の興亡と相互依存――京大環太平洋モデルの構造とシミュレーション』(京都大学学術出版会,1998年)など。
【著者】 田添 篤史(たぞえ あつし)[第3章執筆] 三重短期大学准教授,博士(経済学)(京都大学) 主要業績に『投下労働量からの日本経済分析――「価値」と「価格」で見る日本型資本主義』(花伝社,2021年),「産業連関表を用いた置塩型利潤率の計算による資本労働関係の分析――2000年代初めにおける日本経済の構造変化の抽出」(『季刊経済理論』第51巻第2号,2014年),「『置塩定理』に対する擁護論――Laibmanの議論の拡張および厳密化をベースとして」(『季刊経済理論』第48巻第2号,2011年)など。
永田 貴大(ながた たかひろ)[第6章執筆] 慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了 主要業績に「商品取引回数に着目した仲介者の存在条件」(『季刊経済理論』第57巻第2号,2020年),「移民政策をめぐる階級対立のゲーム論的分析――第二次世界大戦以後のドイツ移民政策の歴史的変遷へのひとつの解釈」(『政経研究』第115号,2020年)。
上西雄太(かみにし ゆうた) [第7,8,9章執筆] 慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程
吉井 駿也(よしい しゅんや) [第12,13章執筆(第一筆者)] 慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程 主要業績に「経営規模格差の歴史的変動モデル――大西(2012)補論3モデルの一般化」(『政経研究』110号,2018年)など。
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