悲しい曲で人は悲しくはならない―― 心の哲学を利用した美学の観点から、「音」とは何か、「聴取」とは何なのかを考察する。
美しい音楽を聴いたとき人は感動を覚える。このような美的経験は日常にあふれているが、美しい/美しくないという判断にはどのような基準があるのだろうか。そしてどれほどの客観性があるのだろうか。 本書では、美に関する経験や判断の問題を扱う美学に、心の哲学を利用してアプローチする。とりわけ「音楽聴取」に焦点をあわせ、美的判断の客観主義を擁護する立場をとりつつ、音とは何か、なぜ人は悲しい音楽を聴くのか、音楽と情動はどのように結びついているのか、などさまざまなトピックについて論じていく。
『音楽鑑賞教育』 季刊vol. 57(通巻561・2024年4月)「本の紹介」(p. 56)にて紹介されました。評者は、市川恵氏(東京藝術大学准教授)です。
台東鳥瞰(台東区文化産業観光部文化振興課発行) vol. 05(2020 AUTUMN)「特集 音楽鑑賞”再”入門!」(p.8)にて紹介されました。 本文はこちら
図書新聞 第3431号(2020年1月18日号)6面に書評が掲載されました。評者は難波優輝氏(分析美学者・批評家)です。
はじめに
第1章 音楽美学と心の哲学 1 聴取経験の分析 問題となる聴取経験/情動とのアナロジー/概念分析と心の分析 2 音楽美学の自然化 哲学的自然主義/反自然主義に関して
第2章 「美しい音楽」は人それぞれ? 1 基本概念の整理 判断と経験/美的判断と美的経験/美的性質と非美的性質 2 実存性と客観性を分ける 客観主義と主観主義/色をめぐる議論
第3章 「美しい音楽」の客観性 1 正しい美的経験の条件 ゼマッハ/ウォルトン ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
源河 亨(げんか とおる) 2016年、慶應義塾大学大学院にて博士(哲学)を取得。現在は、慶應義塾大学文学部・日本大学芸術学部・立正大学文学部にて非常勤講師。専門は、心の哲学、美学。 著作に、『知覚と判断の境界線――「知覚の哲学」基本と応用』(慶應義塾大学出版会、2017年)。訳書に、セオドア・グレイシック『音楽の哲学入門』(慶應義塾大学出版会、2019年、共訳:木下頌子)、ジェシー・プリンツ『はらわたが煮えくりかえる――情動の身体知覚説』(勁草書房、2016年、単訳)、ウィリアム・フィッシュ『知覚の哲学入門』(勁草書房、2014年、監訳:山田圭一、共訳:國領佳樹・新川拓哉)、など。
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