▼真実を追い求めよ 1989年の革命、9.11の犠牲、イラク戦争、深まる中東の危機、 そして、アメリカ共和国の没落――。
時代の変化に抗い、飽くことなく真実を追究した知識人、 トニー・ジャットの魂の軌跡。
トニー・ジャットは中央ヨーロッパのユダヤ系一族にルーツを持つ、 イギリス出身の歴史家であった。 奨学金少年(スカラーシップ・ボーイ)として、戦後福祉国家の恩恵を受けて育ったジャットは、ヨーロッパ的な社会民主主義を徹底して擁護し、 反知性主義や反エリート主義の風潮に抗った知識人であった。 そう、ジャットは確かに知識人であった。 彼は歴史家として、歴史を書くだけではなく、 歴史に学び、得られた洞察と知恵をもって、現代世界に語りかけた。
1989年のさまざまな革命、9.11の犠牲、イラク戦争、深まる中東の危機、 そして、アメリカ共和国の没落――。現実が変化し事態が展開していくにつれて、 ジャットは、時代の潮流に逆らって進み、彼の知力のすべてをもって、 思想という船の向かう先を、異なる方向に向けるための戦いを繰り広げた。
本書は、飽くことなく事実と真実を追究した知識人、トニー・ジャットの 魂の軌跡である。

朝日新聞 2019年5月25日(17面)「読書欄」に書評が掲載されました。評者は宇野重規氏(東京大学教授・政治思想史)です。 本文はこちら
読売新聞 2019年5月19日(14面)に書評が掲載されました。評者は鈴木幸一氏(インターネットイニシアティブ会長CEO)です。 本文はこちら

序 誠実さをもって ジェニファー・ホーマンズ
I 一九八九年――私たちの時代 第1章 終わりなき下り坂 第2章 ヨーロッパ、大いなる幻想 第3章 重罪と軽罪 第4章 冷戦が機能した理由 第5章 自由と自由の国
II イスラエル、ホロコースト、ユダヤ人 第6章 どこにも辿り着かない道 第7章 イスラエル――代案 第8章 「イスラエル・ロビー」と陰謀論 第9章 戦後ヨーロッパにおけ ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
[著者] トニー・ジャット(Tony Judt, 1948-2010) ロンドン生まれ。ケンブリッジのキングズ・カレッジ、パリの高等師範学校を卒業。オクスフォードのセント・アンズ・カレッジでフェローおよびチューターを務めた後、ニューヨーク大学教授に就任。1995年から、レマルク研究所長としてヨーロッパ研究を主導した。『ニューヨーク・レヴュー・オヴ・ブックス』誌その他に寄稿。2005年に刊行された『ヨーロッパ戦後史』(みすず書房、2008年)はピューリツァー賞の最終候補となるなど高く評価される。2007年度ハンナ・アーレント賞を受けた。2010年8月6日、ルー・ゲーリック病により死去。その生涯はティモシー・スナイダーとのインタビュー集『20世紀を考える』(河野真太郎訳、みすず書房、2015年)で語られている。
[編者] ジェニファー・ホーマンズ(Jennifer Homans) 文化史家。ニューヨーク大学バレエ芸術センターの創立者ならびに所長。著書に『アポロの天使──バレエ史』(未邦訳)がある。『ニュー・リパブリック』誌や『ニューヨーク・レヴュー・オヴ・ブックス』誌などでバレエ批評などを執筆している。研究者となる前にはプロのバレエダンサーであり、パシフィック・ノースウェスト・バレエ団などでパフォーマンスを行っていた。
[訳者] 河野 真太郎(こうの・しんたろう) 1974年生まれ。専修大学法学部教授。専門はイギリス文学・文化と批評理論。著書に『〈田舎と都会〉の系譜学──二〇世紀イギリスと「文化」の地図』(ミネルヴァ書房、2013年)、『戦う姫、働く少女』(堀之内出版、2017年)など。訳書にトニー・ジャット『失われた二〇世紀』(共訳、NTT出版、2011年)、トニー・ジャット、ティモシー・スナイダー『20世紀を考える』(みすず書房、2015年)など多数。
西亮太(にし・りょうた) 1980年生まれ。中央大学法学部准教授。専門はポストコロニアル文学・批評。論文に「スピヴァク:ロウロウシャとは何だ」(共著、『労働と思想』、堀之内出版、2015年)、「何を差し出すか──デレク・ウォルコット「パントマイム」における役割交換の戦略」(『英語英米文学』、中央大学英米文学会、2016年)など。翻訳に、トマ・ピケティ、エマニュエル・サエズ「不平等の長期的趨勢」(『ニュクス』創刊号、2015年)、ヘザー・ブラウン「マルクスのジェンダーと家族論」(『ニュクス』第3号、2016年)など。
星野真志(ほしの・まさし) 1988年生まれ。一橋大学大学院言語社会研究科修士課程を経て、マンチェスター大学博士課程修了(PhD)。専門は1930・40年代イギリスの文化と政治(ジョージ・オーウェル、ドキュメンタリー運動など)。訳書に『革命の芸術家──C・L・R・ジェームズの肖像』(共訳、こぶし書房、2014年)、ナオミ・クライン『楽園をめぐる闘い』(堀之内出版、2019年)。
田尻歩(たじり・あゆむ) 1988年生まれ。一橋大学大学院言語社会研究科博士課程在籍。専門は美学理論。論文に「理論と実践の間の写真──アラン・セクーラの写真理論再読」(『年報カルチュラル・スタディーズ』第6号、2018年)、「「存在の闘い」としての写真理論──中平卓馬の写真理論再読」(『言語社会』第13号、2019年)など。翻訳に、ピーター・ホルワード「自己決定と政治的意志」(『多様体』第1号、月曜社、2018年)がある。
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