▼19世紀への変わり目、天明から文化に至る40年間、社会は静かに大きく変わろうとしていた。その時代の経済思想をさまざまな視点から描き出し、近代へ向けての一歩を問う。
1800年前後、天明から文化へ至る40年間は、文化が爛熟に向かい、社会や経済が深い所で静かに大きく変わった。本書は、その時代の経済思想に焦点をしぼり、さまざまな角度から光をあてる。 商家出身の儒者頼春水、市井の経世論者海保青陵や本多利明、商人にして測量家の伊能忠敬、両替商鴻池の経営者草間直方など、すでに知られた人々の思想ばかりでなく、芸能興行をめぐる官民の経済意識、勘定奉行など幕府幹部の経済観、穀物備蓄をめぐるセーフティーネットの思想にも目を向けた。 それらが織りなすものとして、本書は近代へ向けての歴史の一歩を描き出す。
経済学史研究(経済学史学会発行) 59-1号(2017年7月)「書評」(p.117)に掲載されました。評者は西岡幹雄氏(同志社大学)です。
序 本書の視点と各章の位置づけ 小室正紀
第1章 「道を知る」こと ―― 学問の転換期と頼春水 ベティーナ・グラムリヒ=オカ(山本嘉孝訳) はじめに ―― 学問の転換期 1 父親による投資 2 人名録を携えて 3 ネットワークへの参加とその費用 4 ネットワークのさらなる拡大 5 学問の活用 6 帰郷への思い 7 ネットワークの構築者として おわりに
第2章 近世高砂社の芸能興行と賑わい 塩川隆文 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
(※〔 〕内は、担当章。) 【編著者】 小室正紀(こむろ まさみち)〔序、第4章、あとがき〕 慶應義塾大学名誉教授。 1973年慶應義塾大学経済学部卒業、1978年同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。 主な編著書に『草莽の経済思想』(御茶の水書房、1999)、『日本の経済思想四百年』(共著、日本経済評論社、1990)、『福沢諭吉書簡集』(全9巻、共編、岩波書店、2001〜2003)、『福沢諭吉著作集』第6巻(編著、慶應義塾大学出版会、2003)、『福沢諭吉の手紙』(共編、岩波文庫、2004)、『慶應義塾史事典』(慶應義塾、2008)・『福沢諭吉事典』(慶應義塾、2010)各編集委員、『近代日本と経済学』(共編著、慶應義塾大学出版会、2015)など。
【執筆者】 ベティーナ・グラムリヒ=オカ(Bettina Gramlich-Oka)上智大学国際教養学部准教授〔第1章〕 塩川隆文(しおかわ たかふみ)金沢市立玉川図書館職員〔第2章〕 田口英明(たぐち ひであき)慶應義塾福沢研究センター調査員〔第3章〕 青蜿~子(あおやぎ じゅんこ)大東文化大学経済学部非常勤講師〔第5章〕 落合 功(おちあい こう)青山学院大学経済学部教授〔第6章〕 宮田 純(みやた じゅん)関東学院大学経済学部非常勤講師〔第7章〕 橋 周(たかはし ちかし)東京海洋大学海洋科学部准教授〔第8章〕 山本嘉孝(やまもと よしたか)大阪大学大学院文学研究科講師〔第1章訳〕
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