▼哲学的生はいかに形成されるのか
ユダヤ教の中に一つの哲学的洞察を認め、自らそれを生きた哲学者レヴィナス。 レヴィナスを一つの結節点とする知的ネットワーク、 20世紀ヨーロッパ・ユダヤ精神史を描く、レヴィナス評伝の決定版。
20世紀を代表する哲学者レヴィナスは、リトアニアのカウナスに生まれ、第一次世界大戦の混乱期にウクライナに移住した。フランスのストラスブールでフランス哲学と共和国理念に触れ、ドイツのフライブルクでフッサールとハイデガーの薫陶を受けたレヴィナスは、その後、フランス兵として出征した第二次世界大戦で捕えられ、5年間をドイツ北部ハノーノヴァー近郊の捕虜収容所で過ごした。 ホロコーストを生き延び、戦後のフランスにおいて、長らく世界イスラエリット連盟付属の教育機関、東方イスラエリット師範学校校長を務めたレヴィナスは、毎週土曜日にはユダヤ教の思想についての講義を続ける傍ら、哲学雑誌への寄稿も怠らず、50代半ばにして主著『全体性と無限』が認められ、遅咲きの哲学者としてのキャリアをスタートさせる。 哲学の言語に、ユダヤ教の遺産が持つ閃き、響き、色彩を以っていっそうの輝きを与えた哲学者レヴィナスは、はたして自らの哲学をどのように生きたのか。 レヴィナスが生きた世界の実像をあますところなく描き出す傑作評伝。

週刊読書人 3135号(2016年4月8日)(4面)に書評が掲載されました。評者は合田正人氏(フランス文学・フランス思想・ドイツ思想専攻)です。
朝日新聞 2016年4月3日朝刊 読書面に書評が掲載されました。評者は中村和恵氏(明治大学教授)です。

旅立ち はじめに 幼年時代
I さまざまな場所
第1章 カウナス 住まい / 初恋 / 騒乱と熱狂 / 伝統から現代へ / リトワック / サランテルの遺産
第2章 ストラスブール 文学から哲学へ / 教授陣 / 目覚めをもたらした二人 / 痩せとずんぐりの二人組 / 断層 / 脱出と和解 もしもし
第3章 フライブルク・イム・ブライスガウ フランスへのフッサ ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
[著者] サロモン・マルカ(Salomon Malka) 1949年モロッコ生まれ。フランスで活躍するユダヤ人作家・ジャーナリスト。東方イスラエリット師範学校ではレヴィナスに直接学ぶ。ユダヤ人コミュニティ向けの総合誌『ラルシュ』誌編集長を務めたほか、『マガジン・リテレール』誌をはじめとする文化・学術雑誌に多く寄稿する。エマニュエル・レヴィナス、フランツ・ローゼンツヴァイクなどのユダヤ人哲学者の伝記や概説書など多くの著作がある。
[訳者] 斎藤慶典(さいとう よしみち) 慶應義塾大学文学部教授。 1957年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(哲学)。2001年より現職。専門は現象学、西洋近現代哲学。主な著書に、『生命と自由 現象学、生命科学そして形而上学』(東京大学出版会、2014年)、『「実在」の形而上学』(岩波書店、2011年)、『レヴィナス 無起源からの思考』(講談社選書メチエ、2005年)、『力と他者 レヴィナスに』(勁草書房、2000年)などがある。
渡名喜庸哲(となき ようてつ) 慶應義塾大学商学部専任講師。 1980年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。パリ第7大学社会科学部博士課程修了。博士(政治哲学)。専門はフランス哲学、社会思想史。共著に『カタストロフからの哲学』(以文社、2015年)、 Arrachement et évasion: Levinas et Arendt face à l'histoire (Vrin, 2013)、訳書に『レヴィナス著作集』第1巻(法政大学出版局、2014年)、ナンシー『フクシマの後で』(以文社、2012年)などがある。
小手川正二郎(こてがわ しょうじろう) 國學院大學文学部哲学科助教。 1983年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(哲学)。専門は現象学、フランス哲学。主な著書に、『甦るレヴィナス ―― 『全体性と無限』読解』(水声社、2015年)、共著に『顔とその彼方 ―― レヴィナス『全体性と無限』のプリズム』(知泉書館、2014年)、『新プラトン主義を学ぶ人のために』(世界思想社、2014年)などがある。
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