▼ソフィア=つながりの智恵。
個でありながら、全てに開かれ、全てと共にあるような人の在り方を願い続けたロシア最大の哲学者、ウラジーミル・セルゲーヴィチ・ソロヴィヨフ(1853-1900)。 生命の本質的一体性を看破し、それを〈全一性〉の思想として紡ぎ出した。
本書は、旧約の「ホクマー」に由来する「神の智恵=ソフィア」への独自の信仰を育んできたロシアにおいて、ソロヴィヨフが宗教哲学者として、その理念をいかに表現したか描き出す。また、ソロヴィヨフ以降の「ロシア・ソフィオロジー」の継承者たちにも目を向けつつ、〈具体的な総体〉を志向してきたロシアの精神性の一面を、著者自らソ連時代に見聞きしたロシア正教会等の姿をとおして紹介する。
19世紀末ロシアに輩出した宗教思想家たちの、他者への共苦の精神を描き出し、現代の知のあり方への再考をうながす、清新な一冊。

読売新聞 2016年1月10日(朝刊)読書面「本よみうり堂」に書評が掲載されました。評者は月本昭男氏(旧約聖書学者・上智大学特任教授)です。

凡 例 はじめに
第一章 ロシア的霊性 無神論体制下のロシア正教会 / 異なるものが切り離されず一体であること / イコン・永遠 の窓・教会 / ロシアの修道院の霊性 / 聖霊、パラクレートス / 恩恵と自由意志 / 変わ ること、変わらざること
第二章 ソロヴィヨフ 非分離の精神 哲学者ソロヴィヨフ、その終焉の地から / その哲学的視点、非分離の精神 / グレゴリオ ス・パラマースに示される東方正教会の視点 / ソロヴィヨフの哲学的「非分離」の精神の意 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
谷 寿美(Tani Sumi) 慶應義塾大学文学部教授。倫理学、宗教哲学。博士(文学、慶應義塾大学)。 主要著作は『ソロヴィヨフの哲学』(理想社、1990年)、「『ロシア的人間』 ―― 全一的双面性の洞見者」(『井筒俊彦とイスラーム』坂本勉・松原秀一編、慶應義塾大学出版会、2012年)他、翻訳にソロヴィヨフ『Sophie・La Sophia ―― ソフィアに関する手稿』(新世社、2006年)。
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