ファウストとホムンクルス
ゲーテと近代の悪魔的速度
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人造人間ホムンクルス、その誕生の秘密に迫る。 ▼ゲーテ、不朽の名作『ファウスト』。その第2部に登場する人造人間ホムンクルスは、フラスコの中の人工生命体という「不完全」な形でこの世に産み落とされた。「完全」な人間になることを願って彷徨うホムンクルスの姿に、ゲーテは一体、どのような意味を込めたのか。 ▼近代自然科学の発展にともない、神や神学支配からの解放が徐々に進んでいくなかで、ゲーテは自然科学の発展を評価し、自らも貢献したが、一方で、彼は自然の悪用に対して強い危惧を抱いてもいた。本書では、ゲーテ畢生の大作 『ファウスト』 等、後期3作品を解読し、近代の 「悪魔的速度」 や、人間の理性に潜む野蛮さ、暴力性に鋭い眼差しを向けたゲーテの思想の真髄をあきらかにする。
本書は、日本図書館協会選定図書です。


ゲーテ、永遠の新しさ 訳者まえがきに代えて
序 章 もしくは ベルリン嫌いのゲーテ 第1章 「すべては悪魔的速度で」 ファウストと加速化の時代 第2章 ホムンクルス あるいはスピードダウンする時間 第3章 オッティーリエ 「悪魔的速度」の拒否 第4章 時間の停戦 ゲーテは預言者だったのか? マックス・ベックマン画 『ホムンクルス』 ゲーテの超人類
解題 マックス・ベックマンと《ファウスト》素描 眞岩啓子 訳者解説
原註 訳註
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[著者]マンフレート・オステン(Manfred Osten) ドイツの作家・批評家。元外交官、法律家。 1938年旧東独メクレンブルク州で生まれる。1952年ドイツ連邦共和国へ亡命。1969年ケルン大学で法学博士号(Dr. jur.)取得。同年ドイツ外務省に入省。以降、フランス、ハンガリー、オーストラリアのドイツ大使館勤務。1986−1992年、東京ドイツ大使館で文化・領事部長。この日本滞在を機に、大江健三郎、村上春樹、古井由吉など12名の日本人作家インタビュー集Die Erotik des Pfirsichs(Suhrkamp, 1996)[邦訳、大杉洋訳『日本の現代作家12人の横顔――桃の実のエロス』鳥影社、2008年]を刊行。1993年日本政府から旭日章受章。アレクサンダー・フォン・フンボルト財団前事務総長(1995-2004)。ゲーテに関する著作をはじめ、現在も精力的に執筆を行っている。
[訳者]石原あえか(いしはら あえか) 慶應義塾大学商学部教授。 哲学博士(Dr.phil. ケルン大学)。著書に、Makarie und das Weltall (Köln 1998), Goethes Buch der Natur (Würzburg 2005)のほか、ゲーテと近代自然科学を中心とした学術論文を発表し続けている。訳書に、ハンス・ヨアヒム・クロイツァー著『ファウスト 神話と音楽』(慶應義塾大学出版会、2007年)、編著に『生命を見る・観る・診る 生命の教養学III』(中島陽子氏と共編、慶應義塾大学出版会、2007年)。ドイツ学術交流会Jacob-und-Wilhelm-Grimm-Förderpreis(2005)、日本独文学会賞(ドイツ語論文部門、2006)、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞(FY2006)を受賞。
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