中国の新しいアイデンティティを作り上げた、現代中国の長編小説、待望の翻訳。 ▼中国の「今」をつたえる長編小説。著者の陳染(チェン・ラン、1962年生まれの女性作家)は、現代の中国文学界を代表する作家の一人、本作が日本で初めて紹介される単行本作品となる。本作は、アメリカでも英訳出版され、注目を集めている。 ▼30歳になろうとする女性ニュウニュウを語り手に、鋭敏な少女時代、担任教師からの嫌がらせにあう小中学生期、その嫌がらせが歪んだ愛=欲望に気付くハイティーン期、広場に起こる政治のうねりと恋愛の重なる大学生時代、恋人の国外逃亡、姉とも慕う隣人女性の死、母の死、と続く不幸を逃れるようにバスルームにひとりこもって回想する。女性の官能の美と自分の存在とは何か? を「肉体の言語」で描き、世紀末の中国に新しいアイデンテ ィティを示唆した長編小説。 ▼リアルと幻想を綯交ぜた繊細で強靭な表現を日本語で再現した素晴らしい翻訳。
本書は、日本図書館協会選定図書です。
みすず 568号(2009年1・2月号)「2008年読書アンケート」(7頁)で紹介されました。
日中文化交流 2008年5月1日号(no.743)「縦波横波」欄に中沢けいさんの評で紹介されました。 日中文化交流 2008年4月1日号(no.742)「本・評と紹介」欄で紹介されました。 東京新聞 2008年2月14日夕刊「翻訳ほりだし物」欄で紹介されました。
0 時間は流れてもわたしは変わることなくここにいる 大声を上げて叫び出さないように、わたしたちはハミングし、不平を漏らす。 暗闇から逃れるために、わたしたちは目を閉じる。
1 黒い雨の中のトーダンス その女(ひと)は一筋の深い傷口、 世界に歩み出すときの、わたしたちの砦。 彼女の瞳は光を放ち、 その光がわたしたちの道となる。 体中に傷口をあけたこの女こそわたしたちの母だ。 わたしたちを産み出 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
【著者】 陳染(チェン・ラン) 1962年北京生まれの女性作家。北京師範大学に在学中から小説の創作を開始し、85年 に中国作家協会会員となる。若く活気あふれる作家群の一人として文壇の注目を集め、長編小説『与往時乾杯(昔のことに乾杯)』は映画化され、評判を呼んだ。邦訳作品に「虚ろな人、誕生」(飯塚容訳)、「誰もいない窓」(鷲巣益美訳)、「唇の中の太陽」(伊禮智香子訳)などがある。
【訳者】 関根謙(せきね けん) 1951年福島県生まれ。文化大革命直前の中国大連で中学時代3年間を過ごす。慶應義塾大学大学院修士課程修了。専攻は中国現代文学。現在、慶應義塾大学文学部教授。訳書に、阿壠『南京慟哭』(五月書房)格非『時間を渡る鳥たち』(新潮社)、虹影『飢餓の娘』(集英社)などがある。
|