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連載

The Cambrige Gazette


グローバル時代における知的武者修行を目指す若人に贈る
栗原航海(後悔)日誌@Harvard

『ケンブリッジ・ガゼット:Lessons Learned』

第4号(2006年9月)
 
 

3. 日韓関係―『交隣須知』再考

 今回のテーマは「日韓関係―『交隣須知』再考」です。結論を先取りして申し上げますと次の通りです。すなわち、我が国とその最も近い国である韓国との関係は残念ながら様々な点で摩擦の種を抱えている。最も近いが故に、地理的にも歴史的にも摩擦が発生することはやむを得ないとしても、日韓両国共に、互いを正確に知ることなく、往々にして自らが根拠無く形作った「イメージ」に基づいて感情的に「非難」の応酬をしている嫌いが無いでもない。グローバリゼーションの時代において、米国と共に日本が大国として世界の中で責務を果たしてゆかなくてはならない時、「最近隣国」との摩擦は我が国の国益の観点から最小限にとどめる必要がある。そのためには、相手である韓国を改めて良く知る必要がある。また、韓国からの不当な「非難」に対しては、国際的に観て正当化された論理に基づき、冷静に反論して相手の理解を求める必要がある。こうして友好的かどうかは別としても、少なくとも平和的な関係の礎を築く必要がある。これが今回の話であります。

私事で恐縮ですが、私は東京に在る赤坂プリンス・ホテルの旧館で結婚披露宴を行いました。旧館にはフランス料理店「トリアノン」やバー「ナポレオン」が在り、皆様のなかにも同館を訪れた方がいらっしゃることでしょう。が、この館が朝鮮の李王朝に縁の深い館であり、李朝最後の皇太子、イ・ウン(李垠)が我が国の皇族、梨本宮方子妃と結婚されてお住まいになったことを知る人は少ないのではないでしょうか。私自身も、結婚式の際、媒酌人をお願いした旧華族の坂本俊造氏から「幼い頃、この邸の住人イ・ク(李玖)王子をはじめ、学習院の友達とかくれんぼして遊んだ所で初めての媒酌人を務めるとは不思議な縁を感じる」旨のお話を伺うまでは全く知りませんでした。こう考えますと、知る知らないにかかわらず、日本と韓国とは地理的条件を理由として歴史的にも最も深く繋がった国であることは皆様も感じて頂けると思います。 小誌でよく言及させて頂く岡崎久彦大使がペンネームの長坂覚で書かれたご著書『隣の国で考えたこと』があります。同書は、同大使が1973年10月から1976年3月まで、公使としてのご経験を基に著されたものですが、その中に次のような表現があります。「日韓関係に関する限り、客観的に見て、どうも日本側が言われても仕方のないことの方が断然多いようです。その理由はいろいろありますが、そのすべての根底にあるものは韓国についての日本人の無知のひどさです。後で申し上げるように韓国の方の対日理解にも問題があるのですが、日本人の無知は少し常識の範囲を超えています。私自身はずかしい話ですが、日韓関係を志して当地に赴任して来ながら、ヤンパン(両班)という言葉一つ知りませんでした。… これほどの無知の背後にはたしかに異常な環境があるようです」、と。

 

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著者プロフィール:栗原潤 (くりはら・じゅん)
ハーバード大学ケネディスクール[行政大学院]シニア・フェロー[上席研究員]
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