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The Cambrige Gazette


グローバル時代における知的武者修行を目指す若人に贈る
栗原航海(後悔)日誌@Harvard

『ケンブリッジ・ガゼット:Lessons Learned』

第6号(2006年11月)
 
 

3. 日中関係: 21 世紀東亜最大の課題

 こうして今回のテーマは「日中関係: 21 世紀東亜最大の課題」です。小誌で繰り返し申し上げておりますが、21 世紀初頭における東アジア最大の課題は「中国の発展過程で噴出する問題に対し、日米両国が協力して如何に中国に助言と苦言を案出するか」と私は考えます。すなわち人口13 億人の中国が政治的・経済的・社会的に大きく変わろうとしている現在、日本は如何なる態度で中国と接するべきか、そして我が国にとって望ましい対中関係を構築するためには、(a)日本にとって最大・最強の国際的パートナーである覇権国米国とは如何なる協力体制が望ましいのか、(b)「最近隣国」の韓国とは如何なる関係を持てば良いのか、更には(c)インドをはじめアジア諸国、(d)中東や欧州、そしてロシアと如何なる形の政治経済的関係を持つべきかを考えなくてはなりません。こうして、対中関係を中心に私達は米国をはじめとする諸外国との関係を再確認する必要があると思います。

 今月号の結論を先取りして申し上げますと以下の通りです。21 世紀の東アジアにおける国際関係では、米国は中国と向かい合う時、日本という第三国を考慮せざるを得ず、同時に日本と向かい合う時には中国という第三国を無視することができない状況になっている。換言すれば日米中の三国は各々両睨みのスタンスを取らざるを得ない状況に置かれている。こうして21 世紀の東アジアは、日米中三極鼎立という新たな『三国志』が展開されているといって過言ではない。同時に、中国最大の貿易パートナーが欧州連合(EU)となり、世界最大の武器輸入国である中国がロシアやEUと軍事技術の上で協力関係を探りはじめている現在、我々はグローバルな視点に立って日中関係を再確認する必要に迫られている。隣国同士である以上、歴史的・地政学的に様々な摩擦は避け得ない状況であるとはいえ、双方とも単純な論理、感情的で狭量なナショナリズム、加えて不正確・不完全な知識と情報に基づいて、「内向き」に「反中」と「反日」を繰り返している嫌いがないでもない。しかしながら、我々は将来生まれてくる若い世代の日中両国民、そして現在及び将来の世界に対して責務を負っている。こうして、「日本の国益」を冷静に熟考しつつ、中国との関係を再考する必要がある。以上であります。

 

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著者プロフィール:栗原潤 (くりはら・じゅん)
ハーバード大学ケネディスクール[行政大学院]シニア・フェロー[上席研究員]
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