法典延期派であった福澤諭吉。それは何故か?
「民法出て忠孝亡ぶ」。この法典論争に、福澤諭吉は何故「法典延期」を唱えたのか? その疑問を端緒として、明治国家の近代企業法制の形成に対する福澤の思想と行動、そしてドイツ人医師ベルツが「日本の教師」と評した福澤の実像を、随筆やコラムも交えつつ、鋭く読み解く。
明治期、近代国家形成の根幹をなす法典の制定をめぐり、価値観が激しく対立した「法典論争」。 法典は思想・政治・経済・言論が交差する場所で形成される――本書は、従来あまり注目されてこなかった福澤諭吉の立場に焦点を当て、法を見る視線とその行為を三部構成でたどる。T部は『西洋事情』『文明論之概略』を背景に、条約改正と法典編纂の延期論の理路を。 U部は帝国議会の大論争を軸に、商法典論争とブールス(取引所)前史から、制度化の現実を描く。 V部は敗訴事件と著作権・出版制度の実践を読み解き、理念、制度、実践が接続される局面を一次史料に基づき読み解いていく。

T 福澤諭吉の法典論 福澤諭吉の法典論 ―法典論争前夜 一 はじめに 二 「政令法律の改革」の条件 ―『西洋事情』と『文明論之概略』 三 井上外交と時事新報発行停止事件
Column 井上条約改正案
法典延期派・福澤諭吉 ―大隈外交期 一 大隈外交と福澤 二 福澤の法典延期論 (T)条約改正と法典編纂の切断/(U) 法典編纂の手続―帝国議会/(V) 法典発布の利害
Column 大隈条約改正案
福澤諭吉と法典論争 ―法典延期・修正 ……
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高田 晴仁(たかだ はるひと) 1965年10月14日富山市生まれ。慶應義塾大学大学院法務研究科教授。 早稲田大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科修了、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。慶應義塾大学法学部専任講師、助教授(准教授)、教授を経て現職。専門は商法。 著書に『会社法の実務とコーポレート・ガバナンス・コードの考え方――平成26年改正会社法を素材として』(共著、弁護士会館ブックセンター出版部LABO、2016年)、『民法とつながる商法総則・商行為法〔第2版〕』(共編著、商事法務、2018年)、『商法の源流と解釈』(日本評論社、2021年)、『有価証券法と民法の交錯』(成文堂、2021年)、『監査役の誕生――歴史の窓から』(国元書房、2022年)ほか多数。
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