逞しく生きた労働者の等身大の姿を描く
労働力移動と農家経営を中心にミクロな分析を行ない、 19世紀末から中国共産党の土地改革時期までの満洲社会像と農村経済の歴史的展開を浮き彫りにする力作。
満洲の開発・開墾は近代以降の複雑な内外情勢の中で急速に進展し、特に鉄道が重要な役割を果たした。また、20世紀初頭からは農業に加えて工業や鉱業などの諸産業も発展し、地域社会や人々の生活に大きな影響を与えることになった。 本書では、日本植民地史研究と中国近現代史研究の両方のアプローチから、満洲の労働力と農家経営に対してミクロな分析をする。とりわけ農村で生活する労働者たちに注目し、彼らの地理的移動と職業移動という二つの動きから農家経営のあり方や、現地農民の行動原理と経営戦略を捉える。


序章 農村から満洲を問う意味 1 満洲農村の軌跡──歴史的背景 2 日本における満洲研究の展開 3 満洲農村をめぐる論点──先行研究の整理と課題 4 研究手法と史料 5 本書の構成
第1章 近代日本の満洲農村調査 はじめに 1 満洲国成立以前の調査 2 産調による農村実態調査 3 農村実態調査の意義と批判 おわりに
第2章 雇農と村落社会 はじめに 1 村落形成と農業形態 2 雇農の労働形態 3 労働条件 ……
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菅野智博 (カンノ トモヒロ) 慶應義塾大学経済学部准教授。 1987年中国吉林省生まれ。東北師範大学歴史文化学院での留学を経て、2011年宇都宮大学国際学部国際文化学科卒業、2013年一橋大学大学院社会学研究科修士課程、2018年一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。日本学術振興会特別研究員DC1およびPD、中山大学歴史学系(珠海)副教授を経て、2021年より現職。専門は中国近現代史、東アジア近現代史。 共編著に『戦後日本の満洲記憶』(佐藤量・菅野智博・湯川真樹江編、東方書店、2020年)、『崩壊と復興の時代――戦後満洲日本人日記集』(佐藤仁史・菅野智博・大石茜・湯川真樹江・森巧・甲賀真広編著、東方書店、2022年)など。
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