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財産の集合的把握と詐害行為取消権

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A5判/上製/480頁
初版年月日:2024/03/30
ISBN:978-4-7664-2955-8
(4-7664-2955-9)
Cコード:C3032
定価 7,920円(本体 7,200円)
財産の集合的把握と詐害行為取消権
詐害行為の基礎理論 第2巻
目次 著者略歴

法秩序の重層構造と動態的法形成。
この分析視角と問題意識を深化させ、
「財産の集合的把握」という新たな現代的課題に挑む第2巻。
 本書は、第1部「財産の集合的把握の新たな展開」と第2部「包括財産法制と詐害行為の基礎理論」からなる。

 第1部では、詐害行為との関係を第2部で論じる前提として、フランスにおける議論を参考としつつ、「財産の集合的把握」について、広い視点から論じられる。
 出発点となるのが、第1章の「フランスにおける財産―bienおよびpatrimoine」である。第1章は、新たな財の特徴として、「複合性(complexité)」と「代替性(fongibilité)」という点を指摘するが、それが第2章以下の底流となっている。次いで、第2章第1節「財産の集合的把握の諸相」が本書第1部の中核をなす部分である。そこでは、まずは財産の集合的把握を、「固定資産の一体的把握」、「流動資産の一体的把握」および「事業の一体的把握」の3つの類型に大別して、そこにおける集合的把握の本質が「利活用(exploitation)」という点にあることが抽出される。そのうち「事業の一体的把握」については、「財の集合的把握」というアプローチとは別に「資産の分離」というアプローチが可能である。他方、財の集合的把握の一類型として、「金融資産の一体的把握」があるとし、そこでの集合的把握の本質は「運用・価値増殖(valorisation)」にあるとする。第2節では、特に「事業の一体的把握」の一例として「営業財産」を取り上げる。
 以上の基本的な問題意識を前提として、第1部第3章では、財産の集合的把握の本質の一つである「利活用(exploitation)」を法的に保障する枠組みとして、所有権を「権能」の束と把握する分析視角の有用性を指摘し、物権ないし物権法を再構成すべき点を、物権法の改正提案も視野に入れて提言する。
 次いで、第4章では、財産の集合的把握が喫緊の課題とされている担保法の分野について、フランス法だけではなく、ベルギー法とケベック法を比較検討して、近時の動産・債権担保法制をめぐる新たな二元的構成の動向を、財産の集合的把握の2つの本質論である「利活用(exploitation)」と「運用(valorisation)」という点から分析を行われる(第1節)。さらに担保における財産の集合的把握を「担保価値維持義務」論から補強し、財産の集合的把握と詐害行為取消権との関係が示唆される(第2節・第3節)。最後に第4節では、第1部の集大成として、今般の担保法改正で注目されている「事業担保」など事業の収益性に着目した担保を、財産の集合的把握の視角から3つの類型に整理し、理論的な課題として、事業担保における@収益把握の意義およびA担保価値維持義務とコベナンツの関係という2つの点を検討し、立法に向けた指針が提示される。

 第2部「包括財産法制と詐害行為の基礎理論」では、第1部「財の集合的把握の新たな展開」の考察を踏まえて、いよいよ財産の集合的把握と詐害行為取消権との関係が論じられる。本書が、著者の最初の論文集である前著『詐害行為の基礎理論』の第2巻として位置づけられる所以が存する。
 第1章は、平成29年(2017年)の民法(債権関係)改正により新設された詐害行為取消権規定の構造を、動態的な法認識論の視角から、従前の「狭義の詐害行為」と「偏頗行為」という「類型論」から一歩進化した、424条1項を「一般規定」とする「重層的規範構造」を有するものとして分析する。その基礎法学的な分析に基づいて、第2章では、実践的な課題として、「濫用的会社分割・事業譲渡」の紛争類型を、その規範構造によってはじめて対応可能となるハードケースの一例として取り上げる(第1節)。第2節では、同様の分析視角が「事業信託」に応用される。第3章では、濫用的会社分割の紛争類型の法的対応を通して、詐害行為取消権の効果として「価額償還請求」の意義、「対抗」「対抗不能」の意義について再考察がなされる。
 最後に、「法秩序の重層的構造と動態的法形成」と題された「結語」では、サブタイトル「詐害行為(fraude)の一般法理」がその一貫性を示すように、前著『詐害行為の基礎理論』(第1巻)および本書『財産の集合的把握と詐害行為取消権』(詐害行為の基礎理論・第2巻)に共通する動態的な法認識論的な方法論が整理される。

目次

序 論 新たな自由社会における詐害的な行為に対する私法上の法規制――フランスの「詐害(fraude)」法理からの示唆
T はじめに――フランスの「詐害(fraude)」法理を起点として/U 濫用的会社分割への対応/V 集合動産譲渡担保における設定者の処分権限の規律/W 本書の構成

第1部 財産の集合的把握の新たな展開
第1章 財 産――bien およびpatrimoine
T はじめに/U 財(biens)/V 資産(patrimoine)/W 小括――新たな財と「財の法」の課題
……

著者略歴 著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。

片山 直也(かたやま なおや)

慶應義塾大学大学院法務研究科教授。博士(法学)。
1961 年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、同大学大学院法学研究科民事法学専攻前期博士課程修了、同専攻後期博士課程単位取得退学。慶應義塾大学法学部専任講師、同助教授、同教授を経て現職。慶應義塾大学大学院法務研究科委員長(2011年〜2017年)。トゥールーズ第1大学(フランス)私法研究所招聘研究員(1999年〜2001 年)、パリ第2大学(フランス)民法研究所招聘研究員、マギル大学(カナダ)ポール=アンドレ・クレポー私法比較法研究所招聘研究員、ブリュッセル自由大学(ベルギー)私法研究所招聘研究員(2019年〜2020年)。学外委員として、司法試験考査委員(民法、2013年〜2017 年)、法科大学院協会理事長(2020年〜2023年)、法制審議会(担保法制部会)臨時委員(2021年〜)、日本学術会議連携会員(2014年〜)など。
著書に『詐害行為の基礎理論』(慶應義塾大学出版会、2011年、単著)、Le patrimoine au XXIe siècle : regards croisés franco-japonais, Collection Droits Étrangers, vol. 12, Société de législation comaprée, 2012(共編著)、『財の多様化と民法学』(商事法務、2014年、共編著)、『法典とは何か』(慶應義塾大学出版会、2014年、共編著)、『詳解改正民法』(商事法務、2018年、共編著)、『社会の発展と民法学(上巻・下巻):近江幸治先生古稀記念論文集』(成文堂、2019年、共編著)、『民法と金融法の新時代:池田眞朗先生古稀記念論文集』(慶應義塾大学出版会、2020年、共編著)、『Law Practice T総則・物権編[第5版]』『Law Practice U債権編[第5版]』(商事法務、2022年、共編著)、『アルマSpecialized民法4債権総論[第2版]』(有斐閣、2023年、共著)、『民法と倒産法の交錯―債権法改正の及ぼす影響』(商事法務、2023年、共編著)ほか多数。

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