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犯罪被害者への賠償をどう実現するか

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四六判/上製/480頁
初版年月日:2024/04/25
ISBN:978-4-7664-2951-0
(4-7664-2951-6)
Cコード:C0032
定価 3,520円(本体 3,200円)
犯罪被害者への賠償をどう実現するか
刑事司法と損害回復
目次 著者略歴

刑事司法制度における
犯罪被害者への損害賠償の実現に向けた提言

司法関係者のほとんどが無理だとしてきた従来の状況を打破し、警察、検察、刑務所、保護観察所といった刑事司法機関が犯罪者による被害者への賠償に向け為しうる方策について提案する。
重大事件の犯罪者による被害者への損害賠償の実現可能性について、刑事法の研究者(おそらく民事法の研究者も)や法曹実務家に尋ねたら、100人中100人が無理だと答えるだろう。

損害賠償を請求したところで、犯罪者には資力がなく、無い袖は振れないから無理だというのである。

学界においても、この問題が真剣に議論されることはこれまで殆どなかった。被害者の窮状はわかるが、実際問題としてどうしようもないと、議論はそこで止まってしまうのが常であった。

犯罪により、被害者は生命や心身に重大な被害を被るだけでなく、大きな経済的損害を被る。家計の担い手が犯罪によって亡くなると、収入は途絶え、残された遺族は、家族を失った悲しみ、苦しみに加え、次の日からの生活にも事欠くことになる。犯罪により体や心に重篤な障害が残った場合も、仕事や日常生活を続けることができなくなり、治療やカウンセリング等のために多額の出費を強いられる。

被害者が被った損害を補填する責任があるのは、言うまでもなく犯罪者である。犯罪者が賠償を自発的に払わなければ、被害者は民事裁判を提起することもできる。しかし、時間と労力と費用を掛けて民事裁判を起こし、損害賠償の支払いを命じる判決を得ても、犯罪者に資力がなければ、判決書は「絵に描いた餅」に過ぎない。

2008年から損害賠償命令制度が導入され、被害者は訴訟の負担なく、賠償命令の決定を得ることができるようになったが、犯罪者にお金がなければ、所詮、「絵に描いた餅」であることに変わりは無い。問題の核心は裁判や賠償命令で確定した損害賠償を犯罪者にどのように支払わせるかであるにもかかわらず、その問題に突き当たると途端に思考停止に陥り、議論も制度も全く進展してこなかったのである。

1980年に国が一般予算から被害者に給付金を支給する犯罪被害給付制度が実現し、犯罪被害者の経済的窮状は少しばかり緩和されることになったが、却って犯罪者による被害者への損害賠償問題が一層等閑視されるようになった感が否めない。国から経済的支援を幾ばくか得られるようになったから、それで良しとすべきだ、というかのようである。

犯罪被害給付制度は被害者の被った損害を補填するものではなく、被害者の損害を補填する責任を負うのはやはり犯罪者である。近年、資力のない犯罪者に代わって国が損害賠償を被害者に立替払いする制度を設けるべきだとする主張が見られるが、仮にこうした制度が導入されたとしても、国は犯罪者に立替分を請求する必要があることから、犯罪者が損害賠償を払わなければならないことに変わりは無い。

損害賠償の支払いを犯罪者に強いれば、犯罪者の改善更生や社会復帰が危ぶまれるという主張も根強い。勿論、犯罪者の生活を圧迫して、再犯や生活破綻に追い込むようなことは絶対に避けなければならない。

しかし、だからと言って、これまでのように、社会復帰の名の下に損害賠償の責任を果たさないことが当たり前であるかのように放置することは許されるべきではない。

犯罪者の社会復帰とは、単に再犯をしないことだけではない。それは最低限の要請である。社会復帰、改善更生には、自らが犯した罪に向き合い、被害者に与えた損害をできる限り補填していくことも含まれなければならない。国は、刑事裁判で犯罪者に刑罰を科す一方、民事裁判や損害賠償命令によって犯罪者に被害者への賠償を命じているのであるから、犯罪者が賠償の履行に向け為しうる限りの努力を「国が」させることが必要である。

(本書「はしがき」から)

目次

序 章 犯罪被害と損害賠償の現実
T 犯罪被害の現実―経済的損害/U 犯罪者の損害賠償責任/V 犯罪者に対する損害賠償の請求/W 犯罪者による損害賠償の現実/X 損害賠償不履行の背景/Y 民刑分離原則と刑事司法における損害回復/Z 刑罰論と損害賠償

第1部 犯罪被害者への経済的支援と損害賠償

01章 犯罪被害給付制度と損害賠償
T 犯罪被害給付制度の概要/U 支給対象(受給要件)の見直し/V 給付額の見直し/W 犯給制度と損害賠償

02章 犯罪被害者支援条例と損害賠 ……

著者略歴 著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。

太田達也(おおた たつや)
1964年生まれ。慶應義塾大学法学部教授。博士(法学)。
日本被害者学会理事長、日本刑法学会理事、犯罪被害者等施策推進会議委員、最高検察庁刑事政策専門委員会参与、法務省法務総合研究所研究評価検討委員会委員、同犯罪白書研究会委員、一般財団法人日本刑事政策研究会理事、公益財団法人アジア刑政財団理事,公益社団法人被害者支援都民センター理事などを務める。
編著書として、『Victims and Criminal Justice: Asian Perspective(被害者と刑事司法―アジアの展望)』(編著、慶應義塾大学法学研究会、2003)、『いま死刑制度を考える』(共編著、慶應義塾大学出版会、2014)、『リーディングス刑事政策』(共編著、法律文化社、2016)、『仮釈放の理論―矯正・保護の連携と再犯防止』(慶應義塾大学出版会、2017)、『刑の一部執行猶予―犯罪者の改善更生と再犯防止〔改訂増補版〕』(慶應義塾大学出版会、2018)ほか。

定価3,520円 (本体:3,200円)
在庫あり

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