「為替」の壁を乗り越えられるか
2022年からの歴史的な円安進行によって、円の実質実効為替レートは1970年代前半と同等の水準にまで低下したといわれる。 果たして円はどれほどパワーを失っているのか。かつて最強の貿易立国と謳われた栄光は取り戻せるか。大幅な為替変動に直面する日本企業にとって、円建て貿易の促進は処方箋となり得るのか。最新の企業調査に基づく著者オリジナルの経済分析によって、今日のわが国と円の「真の姿」をわかりやすく説明。
2022年の急速な円安進行によって「円の実力が低下した」とたびたび指摘される。円の実質実効為替レートが50年前(1970年代前半)とほぼ同水準にまで減価したことが理由だが、果たして円の実力は本当に低下したのか? そもそも円の実力はどのようにして測るべきなのか? 円安が進んでも日本の貿易収支は改善せず、近年ではむしろ貿易赤字が続いている。なぜ円安によって日本の貿易収支は改善しないのか?
過去50年以上にわたる大幅な為替レートの変動に対して、日本企業は積極的な海外進出と、アジアを中心とする生産・販売ネットワークの構築で対応してきた。この生産・販売ネットワーク下で日本企業はどのような通貨戦略によって為替変動リスクに対処してきたのか?
円建て貿易が伸びず、ドル建て貿易が中心と言われてきた日本の貿易建値通貨選択が、アジアで大きく変わりつつある。アジア現地通貨建て取引の拡大という新たな変化をデータによって明らかにする。
過去17年にわたって日本企業へのインタビュー調査とアンケート調査のプロジェクトに関わってきた著者が、これまで構築した独自データベースに基づく研究成果を踏まえて、上記の課題を分析・解説する。
『日本経済新聞』 2024年12月28日 読書面(29 面)「エコノミストが選ぶ 経済図書べスト10(2024年)」にて第8位に選ばれました。
『週刊金融財政事情』 2024.9.10号「一人一冊」(p.50)に書評が掲載されました。評者は、河野龍太郎氏(BNPパリバ証券チーフエコノミスト)です。
『週刊エコノミスト』 2024年8月27日・9月3日合併号「特集 通貨を学ぶ本 わたしのこの1冊」(p. 91)に挙げていただきました。評者は、根本直子氏(早稲田大学大学院教授)です。
序章 日本国通貨「円」と向き合う
第1章 悪い円安と貿易赤字
第2章 なぜ日本の貿易収支は改善しないのか
第3章 円建て貿易はなぜ進まないのか
第4章 日本企業は為替の壁を乗り越えたのか
第5章 国際生産ネットワークと日系海外現地法人の建値通貨選択 ――アジア現地通貨建て取引は拡大するのか
終章 円の実力と日本企業の通貨戦略の課題
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
佐藤清隆(さとう・きよたか) 1968年生まれ。91年、横浜国立大学経済学部卒業。98年、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。2001年、博士(経済学)取得(東京大学)。(財)国際東アジア研究センター研究員、横浜国立大学経済学部助教授・准教授・教授を経て、2013年より横浜国立大学国際社会科学研究院教授(現在に至る)。Managing Currency Risk: How Japanese Firms Choose Invoicing Currency, Cheltenham, UK: Edward Elgar刊(共著、2018)にて、日経・経済図書文化賞受賞(2019年)。
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