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近代国際秩序形成と法

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A5判/上製/320頁
初版年月日:2023/06/23
ISBN:978-4-7664-2898-8
(4-7664-2898-6)
Cコード:C3032
定価 6,050円(本体 5,500円)

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近代国際秩序形成と法
普遍化と地域化のはざまで
明石 欽司 編著
韓 相煕 編著
目次 著者略歴

「国際法の普遍化過程」を再考し
「欧州中心主義」を問い直す
国際法は、多様な価値体系や宗教が共存する現代国際社会に適用されるべき法規範であり、欧州中心主義の影響を受けて普遍化してきた。しかし、その普遍性や欧州中心主義ははたして正しい認識なのか。

【本書 「はしがきにかえて」から】
「我々が現在認識している「国際法」は、多様な価値体系・宗教・イデオロギーが共存する現代国際社会の全体に一元的に適用されるべき法規範であると理解されている。その意味において、国際法は観念的には単一の「普遍的」規範体系であると言える。勿論、そのような「普遍性」は実定国際法の存在(の必要性)が意識され始めた当初から存在したのではなく、国際法の直接的起源が地域的に限定された「欧州公法」(jus publicum Europaeum)としての「近代国際法」にあるとの理解は広く共有されている。そして、その理解の背後には、近世・近代の歴史を(「新大陸の発見」という表現に典型的に示されているような)「欧州の拡大」という現象として把握する「欧州中心主義」(Eurocentrism)が存在していると述べることが許されよう。
 欧州由来の近代国際法の拡大と普遍化の結果としての国際法という理解が史実を反映したものであるとしても、そこに内在する「国際法の普遍性」の観念や「欧州中心主義」に対しては多くの疑念・批判が国際法(史)研究者により提起されており、また、それらの疑念・批判を克服するための多様な認識枠組も提示されている。一方において、それらの疑念・批判や新たな認識枠組の提示は、欧州中心主義的思考に無自覚の裡に搦め捕られているような国際法(史)研究者が少数派と化す状況をもたらした点において、極めて有益であったことは確かである。他方において、それらの認識枠組の中には、歴史研究における厳密な方法論を無視した安易な手法に基づく自己主張をもたらしているに過ぎないと感じられるものもあり、その結果として、国際法史研究の学問的意義にすら疑念を抱かせるようなものも含まれているように思われる。
 それらの認識枠組がどれほどの学術的価値を有するのかは、将来世代の研究者による評価を待たねばならないであろう。それでも、我々が国際法史研究を歴史研究の一翼を担う学問領域であると確言するためには、歴史研究に必要とされる実証性を欠く言説を声高に主張するような態度は厳に慎まれるべきであり、それと同時に、国際法史研究が学問たり得るための(本来の意味での)方法論を問い続けることの重要性は常に確認され続けねばならないのである。

 ところで、或る社会制度上の観念が地理的な意味において普遍化する過程では、当該観念が存在していなかった地域において何らかの観念的軋轢が生ずる。当該観念が、(自主的であるか、強制的であるかは問わず)当該地域において「受容」される場合には、普遍化は進行し、そうでない場合には普遍化は達成されない。そして、このような社会制度上の観念の受容とその過程における軋轢の発生という現象は、当然のことながら、国際法の普遍化過程においても出来していた。本書に寄せられた諸論考は、欧州中心主義的観点に立ちつつも、近代国際法の普遍化の過程において各地域(「地域」が何を指すのかについては、本書の寄稿者の間には差異が存在する。)で生じた軋轢やその解消を意識した上で、より具体的な現象について論じている。その点において、それらの各論考は単純な「欧州拡大の物語」の中の一節ではないことは確認されるべきであろう。」

目次

普遍化と地域化のはざまで ――はしがきにかえて (明石欽司)

第一部 近代国際法の普遍化の実相 ――地域の包摂

戦間期東アジアにおける国際法研究の諸段階
 ――日本・中国・朝鮮半島・台湾・ベトナムで出版された著作を中心に (韓相熙)

一九世紀国際法における「承認」と「文明」
 ――東アジア諸国による「受容」をめぐる覚え書き (山田哲也)

一八世紀後半から一九世紀初頭のインドにおける割譲条約の実像
 ――インド領通行権事件(国際司法裁判所)判決を手が ……

著者略歴 著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。

明石 欽司(あかし きんじ) [編者]
九州大学大学院法学研究院教授。法学博士(ユトレヒト大学)。
1958年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了、同博士課程中退。主要著作として『不可視の「国際法」―ホッブズ・ライプニッツ・ルソーの可能性』(慶應義塾大学出版会、2019年)、『ウェストファリア条約―その実像と神話』(慶應義塾大学出版会、2009年)ほか。

韓 相熙(ハン サンヒー) [編者]
九州大学大学院法学研究院教授。法学博士(慶應義塾大学)、政治学博士(北京大学)。
1962年生まれ。高麗大学文科大学卒業(仏文学)、同大学法科大学修士課程修了、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了、北京大学国際関係学院博士課程修了。主要著作として“The Source of Yu Kil-chun’s Seven Rights of States: Jan Helenus Ferguson’s Manual of International Law (1884)”『法政研究』第85巻第3・4合併号(2019年)、“Yukichi Fukuzawa (1835-1901): Revisiting Fukuzawa from a Comparative Perspective”, Japanese Yearbook of International Law, vol.56 (2013)ほか。

[執筆者]
李 根寛(イ クングァン)
ソウル大学法学専門大学院教授・国際連合国際法委員会(ILC)委員。法学博士(ケンブリッジ大学)。1964年生まれ。ソウル大学法学部卒業、ジョージタウン大学ロー・センターLL.M.プログラム修了、ケンブリッジ大学博士課程修了。九州大学大学院法学研究院助教授(2003-2004年)。
主要著作として “Recalibrating the Conception of Codification in the Changing Landscape of International Law”; in The United Nations (eds.), 70 Years of the International Law Commission: Drawing a Balance for the Future (Leiden: Brill, 2020): “Reconceptualising the Law of State Succession in Respect of Treaties: Checking the ILC’s ‘Codification’ Efforts against Subsequent State Practice”, Japanese Yearbook of International Law, vol.65 (2022)ほか。

入江 豊明(いりえ とよあき) *訳者
在大韓民国日本国大使館一等書記官。修士(法学)(九州大学)。
1981年生まれ。九州大学法学部卒業、九州大学大学院法学府修士課程修了。2009年に外務省入省後、在釜山総領事館、在大韓民国大使館、経済局漁業室での勤務を経て現職。

沖 祐太郎(おき ゆうたろう)
九州大学国際部国際戦略企画室(J-MENAオフィス)特任准教授。
1986年生まれ。九州大学法学部卒業、九州大学大学院法学府修士課程修了、同博士後期課程単位取得退学。主要著作として「ダール・イスラーム/ダール・ハルブをめぐる議論の国際法学における意義」『世界法年報』第40号(2021年)、「エジプトにおける国際法受容の一側面―フランス語版『戦争法』(カイロ、1872年)のテキスト分析を中心に」『法政研究』第83巻3号(2016年)ほか。

小栗 寛史(おぐり ひろふみ)
岡山大学学術研究院社会文化科学学域(法学系)准教授。博士(法学)(九州大学)。
1991年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了、九州大学大学院法学府博士後期課程修了。主要著作として、「実証主義国際法学の確立過程における合意主義の系譜⑴〜⑶―オッペンハイムの共通の同意理論を中心に」『岡山大學法學會雜誌』第71巻1号・同2号・第72巻2号(2021-2022年)、“Taming Politics or Naïveté of Positivism in International Law?: Lassa Oppenheim and His Ascertainment of Customary International Law”; in Raphael Schäfer and Anne Peters (eds.), Politics and the Histories of International Law: The Quest for Knowledge and Justice (Leiden: Brill, 2021)ほか。

長岡 さくら(ながおか さくら)
叡啓大学ソーシャルシステムデザイン学部准教授。博士(法学)(九州大学)。
北九州大学(現 北九州市立大学)法学部法律学科卒業、九州大学大学院法学研究科修士課程修了、同法学府博士後期課程単位修得退学。主要著作として、「人工知能(AI)技術の外交史料研究への利活用の探求―紙媒体史料の文字認識と課題」『福岡工業大学総合研究機構研究所所報』第2巻(2020年)、「国際法上の『抗議』とその変容―米国の『航行の自由計画(Freedom of Navigation Program)』を例として」『福岡工業大学環境科学研究所所報』第9巻(2015年)ほか。

中川 智治(なかがわ ともはる)
福岡工業大学社会環境学部社会環境学科教授。博士(法学)(九州大学)。
1971年生まれ。九州大学法学部卒業、九州大学大学院法学研究科修士課程修了、同博士後期課程修了。主要著作として「国際法における地図と地図作製の歴史過程について」『福岡工業大学総合研究機構研究所所報』第4巻(2021年)、「衛星リモートセンシングに関する国際法」『福岡工業大学総合研究機構研究所所報』第2巻(2020年)ほか。

西嶋 美智子(にしじま みちこ)
久留米大学法学部国際政治学科准教授。博士(法学)(九州大学)。
九州大学法学部卒業、九州大学大学院法学府修士課程修了、同博士後期課程修了。主要著作として『自衛権の系譜―戦間期の多様化と軌跡』(信山社、2022年)、「第二次世界大戦参戦前のアメリカの連合国援助とその国際法上の正当化根拠」『放送大学研究年報』第36号(2019年)ほか。

深町 朋子(ふかまち ともこ)
福岡女子大学副学長、国際文理学部教授。
1969年生まれ。九州大学法学部卒業、九州大学大学院法学研究科修士課程修了、同博士後期課程単位取得退学。主要著書(共著)・論文として、柳原正治・森川幸一・兼原敦子編『プラクティス国際法講義[第4版]』(信山社、2023年)[第12章国家領域、第15章その他の地域および空間]、「国際裁判における『前近代/非欧州の領域支配』の援用と評価」柳原正治・兼原敦子編『国際法からみた領土と日本』(東京大学出版会、2022年)所収ほか。

山田 哲也(やまだ てつや)
南山大学総合政策学部教授。博士(法学)(九州大学)。
1965年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業、国際基督教大学大学院行政学研究科博士前期課程修了、同博士後期課程中退。主要著作として『国際機構論入門』(東京大学出版会、2018年)、『国連が創る秩序―領域管理と国際組織法』(東京大学出版会、2010年)ほか。

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