オリエンタリズムに抗し、アジア独自の「美術史」を打ち立てようとした、日印共闘のドラマ――。
近代日本美術の父・岡倉天心(1863‒1913) インド宗教改革運動の旗手・ヴィヴェーカーナンダ(1863‒1902)
近代日本美術の復興運動を指揮した岡倉天心は、道半ばで東京美術学校を非職となり、私生活も破綻をきたした1901年末に、突如、日本を脱して9か月にわたりインドに滞在する。 西洋が「美術」の基準とされた植民地時代のインドで、岡倉は自立したインド社会を構想する気鋭の知識人や芸術家、宗教家と邂逅し、その過程で『東洋の理想』などの代表的な英文著作を執筆する。 1893年のシカゴ宗教会議の活躍で知られる宗教改革者ヴィヴェーカーナンダとは、深い思想体験を共有するが、その改革運動が今日のインド社会に与える意味は、これまで十分には明らかにされてこなかった。
日印の資料を紐解いて、その国境を越えた知的変革の軌跡を描き出す、貴重な一冊。
『宗教と社会』 第30号(2024年6月)「書評とリプライ」(P.126-131)に書評が掲載されました。評者は、井上瞳氏(愛知学院大学文学部准教授)です。
『図書新聞』 2024年5月25日(第3640号)(6面)に書評が掲載されました。評者は、岡本佳子氏(国際基督教大学アジア文化研究所研究員)です。
『世界日報』 2023年9月3日に書評が掲載されました。評者は高嶋久氏です。
序章
第一章 岡倉天心のインド体験 一 岡倉天心の生涯──美術史の探求 二 生涯の活動を評価する二つの立場 三 「アジアは一つ」という課題
第二章 越境するアジア知識人──国境を越えて共鳴する「女性像」 一 一八九三年のシカゴ万国博覧会 二 横山大観とオボニンドロナト・タゴール 三 アジア近代絵画の創出 四 二人の女性のまなざし 五 越境するアジア知識人
第三章 岡倉天心の「転向」──社会進化論の克服 一 フェノロサと岡倉天心 二 ギリ ……
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外川昌彦(とがわまさひこ) 1964年生まれ。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授。1992-97年にインドに留学し、ベンガルの農村社会で住み込み調査を行う。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士号(社会学)。専門は、文化人類学、宗教学、ベンガル文化論。主要著作にAn Abode of the Goddess: Kingship, Caste and Sacrificial Organization in a Bengal Village (New Delhi: Manohar, 2006)、共編著にMinorities and the State: Changing Social and Political Landscape of Bengal (New Delhi: SAGE Publications, 2011)、Kinship and Family among Muslims in Bengal (New Delhi: Manohar, 2021)など。
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