▼エーコの原点、待望の翻訳。 ▼「暗黒の中世」像を打ち崩す、「美」にあふれた世界――。
1956年当時、ベネデット・クローチェら美学の大家らによって「中世に美学はない、一貫した美への関心はない」と言われていた。 そんななかウンベルト・エーコは研究者としてとりわけ思い入れの深い中世の思想家トマス・アクィナスの著作に向き合い、トマスのみならず中世思想の根柢には、一貫した「美の思想」が流れていることを明らかにする。
これまでの中世観を変容させ、『薔薇の名前』につながるエーコの躍進の契機となった待望の名著。


『図書新聞』 2023年4月8日(第3586号)(5面)に書評が掲載されました。評者は渡辺洋平氏(美学・哲学)です。
『図書新聞』 2023年3月18日(第3583号)(4面)に書評が掲載されました。評者は佐々木亘氏(鹿児島純心女子短期大学教授・図書館長)です。
『週刊読書人』2023年1月20日号(第3473号)に書評が掲載されました。評者は原基晶氏(東海大学准教授)です。

凡 例 主要引用文献
第二版(1970年)への序文
第一章 中世文化における美学の問題 一 歴史叙述 二 中世の美的感性 三 トマス・アクィナス 四 美的な快の可能性 五 本書の概要
第二章 超越概念としての美 一 問題の定立 二 事物に対する美的な視覚 三 トマス・アクィナスの原典 四 現代的な解釈 五 13世紀の哲学的な伝統における超越概念としての美 六 結論
第三章 美的な「視覚」の機能と本性 一 問題の定立 二 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
【著者】 ウンベルト・エーコ(Umberto Eco) 1932年イタリア・アレッサンドリアに生れる。小説家・記号論者。 トリノ大学で中世美学を専攻、1956年に本書の基となる『聖トマスにおける美学問題』を刊行。1962年に発表した前衛芸術論『開かれた作品』で一躍欧米の注目を集める。1980年、中世の修道院を舞台にした小説第一作『薔薇の名前』により世界的大ベストセラー作家となる。以降も多数の小説や評論を発表。2016年2月没。
【監訳者】 和田 忠彦(Tadahiko Wada) 東京外国語大学名誉教授。専門はイタリア近現代文学、文化・芸術論。主な著書に『遠まわりして聴く』(書肆山田)『タブッキをめぐる九つの断章』(共和国)など。『小説の森散策』(岩波文庫)、『永遠のファシズム』(岩波現代文庫)、『文体練習 完全版』(河出文庫)などエーコの訳書も多数ある。
【訳者】 石田 隆太(Ryuta Ishida) 筑波大学にて博士(文学)を取得後、慶應義塾大学やフリブール大学(スイス)でのポスドクを経て、現在は同志社大学文学部助教。専門は西洋中世哲学。主な著作に「天使学の共時的構造化――井筒、コルバン、アクィナス」(『理想』706号)、『デカルト全書簡集 第四巻』(共訳、知泉書館)など。
石井沙和(Sawa Ishii) 東京外国語大学にて博士(学術)を取得後、主に大学で非常勤講師を務める。 2016年にはNHK「旅するイタリア語」監修。専門はイタロ・ズヴェーヴォをはじめ、トリエステを中心としたイタリア近現代文学。
【解説】 山本芳久(Yoshihisa Yamamoto) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は哲学・倫理学(西洋中世哲学・イスラーム哲学)、キリスト教学。 主な著作に『トマス・アクィナス――理性と神秘』(岩波新書、サントリー学芸賞)、『トマス・アクィナス 肯定の哲学』(慶應義塾大学出版会)など。
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