女性兵士という難問
ジェンダーから問う戦争・軍隊の社会学
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女性兵士は男女平等の象徴か? 戦争や軍隊は、どのような男性や女性によって担われ、 いかなる加害/被害関係を生起させているのか。 既存のジェンダー秩序を自明のものとすることなく、批判的に検証する。
21世紀に入り、世界中の軍隊で、女性兵士は数を増し、 その役割を拡大させつづけている。 しかし、この現象を単純な男女平等の進展と解するべきではないこと、 フェミニズムにとって女性兵士は難問として存在するのであり、 さまざまな立場がありうることは言うまでもない。
本書では、この20余年のあいだに起こったさまざまな変化をふまえつつ、 女性兵士が果たすことを求められてきた役割とその効果に着目し、検証していく。
本書を貫く主張の一つは、戦争・軍隊を批判的に解剖するにあたって、 「ジェンダーから問う」という視角が不可欠である、ということである。 男らしさや女らしさといった観念の操作は、軍事化を推し進め、 戦争を首尾よく遂行する際の要である。 一方で、軍隊も戦争も、女性たちに依拠することを必ず必要としており、 彼女たちの経験から現象を見つめることは、その男性中心性を明らかにするうえで 欠かすことのできない作業である。
本書は、「ジェンダーから問う」ことが、戦争・軍隊を批判的に 考察するうえでいかに重要なのか、 この視点を有することで見えてくる風景を描くことにより示していく。
『社会学評論』 第74巻第1号(293号)に掲載されました。評者は、石原俊氏(明治学院大学社会学部教授)です。
Japanese Journal of Political Science(2023), p.1-3に掲載されました。評者は、Norma Caroline氏(RMIT University)です。 本文はこちら
『女性学』 Vol.30「書評・新刊紹介」(p.120)に掲載されました。評者は、清末愛砂氏(室蘭工業大学教授)です。
はじめに
第T部 ジェンダーから問う戦争・軍隊の社会学 第1章 ジェンダーから問う戦争・軍隊の社会学 1 はじめに――軍事社会学と国際関係論 2 戦争・軍隊とジェンダー 3 ジェンダー化された制度としての軍隊 4 「新しい」軍隊とジェンダー 5 女性兵士という難問 6 おわりに
第2章 戦争・軍隊の男性(性)研究 1 はじめに 2 出発点としてのシンシア・エンローとR・コンネル 3 構築される軍事的男性性
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
佐藤文香(さとう ふみか) 一橋大学大学院社会学研究科教授 1995年慶應義塾大学環境情報学部卒、1997年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了、2000年同博士課程単位取得退学。2002年博士(学術)(慶應義塾大学)。中部大学人文学部専任講師、一橋大学大学院社会学研究科助教授・准教授を経て、2015年同研究科教授、現在に至る。専門分野はジェンダーの社会理論・社会学、戦争・軍隊の社会学。 著書に『軍事組織とジェンダー――自衛隊の女性たち』(慶應義塾大学出版会、2004年)、『ジェンダー研究を継承する』(共編、人文書院、2017年)、『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた――あなたがあなたらしくいられるための29問』(監修、明石書店、2019年)、『シリーズ 戦争と社会 全5巻』(共編、岩波書店、2021-22年)、訳書にシンシア・エンロー『策略――女性を軍事化する国際政治』(上野千鶴子監訳、岩波書店、2006年)、メアリー・ルイーズ・ロバーツ『兵士とセックス――第二次世界大戦下のフランスで米兵は何をしたのか?』(監訳、明石書店、2015年)、シンシア・エンロー『〈家父長制〉は無敵じゃない――日常からさぐるフェミニストの国際政治』(監訳、岩波書店、2020年)などがある。
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