地下出版のメディア史
エロ・グロ、珍書屋、教養主義
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第9回内川芳美記念メディア学会賞を受賞いたしました。
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第44回 日本出版学会賞(2022年度) 奨励賞を受賞しました。
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近代日本の誇る教養主義の「裏通り」を一望する!
軟派出版の世界で、道楽知識人たちは国家権力と戯れ、一大文化空間を築いた―― 「低俗」出版文化の歴史と「書物」「エロ」への欲望を可視化する意欲作
近代日本の出版文化は、岩波書店と講談社に代表される「知識人/大衆」という対比構造によって、しばしば教養主義の観点から論じられてきた。しかし、読書が大衆化した時代に、この図式に収まりきらない非正統的で「知的」な地下出版空間が存在した。 本書では、これまで閑却されてきた非公刊の軟派出版(性風俗、猟奇、犯罪を取り扱った刊行物)とその版元に注目し、教養主義の言説空間との関係性から捉え返すことで、地下出版界をメディア史的に体系化する。 「好色出版の帝王」梅原北明、「書痴」斎藤昌三、「軟派出版界の元老株」伊藤竹酔、「毒舌和尚」今東光など、多くの出版人の足跡を追いながら、同時代の社会運動や芸術運動とのかかわりのなかで広がった「知のネットワーク」を明らかにする。
◆口絵4頁と「地下出版界」関連年表を収録
「紀伊國屋じんぶん大賞2023 読者と選ぶ人文書ベスト30」にて、第 17位に選ばれました。 本文はこちらから
『週刊読書人』 2022年12月16日号(第3469号)<令和4年 2022年の収穫!!>にて、柴野京子氏(上智大学教授・メディア論)に選ばれました。
『社会学評論』 Vol.73, No.3(2022年12月号、p.296-297) に書評が掲載されました。評者は岡田章子氏(東海大学文化社会学部)です。
序 章 教養主義の「裏通り」 1 知的上昇と、「エロ・グロ」の交差点 2 先行研究と本書の立場 3 用語の定義──「地下出版界」を捉えるためのキーワード 4 分析方法 5 本書の構成
第一部 地下出版界の前史
第一章 〈社会運動〉としての自費出版同盟――毒舌和尚・今東光と雑誌『文党』の挑戦 1 軟派出版前史──『文党』の創刊 2 文壇のオルタナティヴを目指す 3 街頭でのパフォーマンスと超党派性 4 「自費出版同盟」構想の内実 ……
著者略歴は書籍刊行時のものを表示しています。
大尾 侑子(おおび ゆうこ) 1989年東京都生まれ。桃山学院大学社会学部准教授。2014年、東京大学大学院学際情報学府博士後期課程満期退学、博士(社会情報学)。 主要業績に、「デジタル・ファンダム研究の射程──非物質的労働と時間感覚にみる「フルタイム・ファンダム」」(『ポストメディア・セオリーズ――メディア研究の新展開』ミネルヴァ書房、2021年)、「「白ポスト」という文化装置──兵庫県尼崎市における有害環境浄化活動のフィールドワーク」(『新社会学研究』5号、新曜社、2021年)など。
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