地下出版のメディア史
エロ・グロ、珍書屋、教養主義
序 章 教養主義の「裏通り」 1 知的上昇と、「エロ・グロ」の交差点 2 先行研究と本書の立場 3 用語の定義──「地下出版界」を捉えるためのキーワード 4 分析方法 5 本書の構成
第一部 地下出版界の前史
第一章 〈社会運動〉としての自費出版同盟――毒舌和尚・今東光と雑誌『文党』の挑戦 1 軟派出版前史──『文党』の創刊 2 文壇のオルタナティヴを目指す 3 街頭でのパフォーマンスと超党派性 4 「自費出版同盟」構想の内実 5 構想の失敗と、軟派出版への新たな兆し
第二章 文藝市場社の「誕生」――烏山朝夢から梅原北明へ 1 梅原北明という演出者 2 「赤色」と「桃色」を往還する 3 朝香屋書店から文藝市場社へ
第三章 「直筆原稿」のメディア論――文藝市場社の設立と直筆原稿叩き売り 1 梅原北明と雑誌『文藝市場』の誕生 2 雑誌『文藝市場』の創刊 3 〈破棄される原稿〉への想像力 4 アヴァンギャルド芸術と労働争議のなかで 5 軟派出版界への足掛かり
第二部 地下出版界の成立過程
第四章 〈変態〉な教養/教養としての〈変態〉――逆立ちした教養主義 1 〈変態〉という新規財貨 2 カタログ化される〈変態〉 3 「趣味的研究」の系譜と趣味家のエートス 4 逆立ちした教養主義 5 水平的な連帯の愉しさ──「珍妙変態行楽」の開催 6 「反−教化メディア」の教養観
第五章 愛書趣味とオブジェとしての書物――軟派出版界と限定本の快楽 1 愛書趣味の涵養 2 伊藤竹酔と軟派出版界 3 円本と大衆的教養の時代 4 艶本叢書の登場と予約全集/円本との差異化 5 「あるべき書物像」の体現 6 パラテクストを通じた愛書趣味の涵養 第六章 〈談奇〉の表象と東アジア――理想郷イメージとしての上海 1 東アジアに向かう視線 2 「上海」へのまなざし 3 「国際的な一歩」としての上海移転 4 〈談奇〉のネットワークと「近代」への応答 5 「東アジア」に広がる地下出版界
第三部 地下出版界の成熟と瓦解
第七章 「地下出版」の最期――大衆化するエロ・グロ・ナンセンスと珍書屋の受難 1 広がりゆく「エロ・グロ・ナンセンス」 2 軟派出版界に吹く“受難の嵐” 3 「高級エロ」による「通俗エロ出版」批判 4 軟派出版史の構築と「正統」化の実践 5 「地下出版界」の成熟と「場」の瓦解
第八章 「裏道の文化」の行方――戦後に残された軟派出版界の残滓 1 戦時下の「梅原北明」を辿る 2 カストリ雑誌に現れた「斯界の権威」 3 〈アブノーマルの共同体〉へ 4 一九六〇〜一九七〇年代、「アングラ」文化に見る足跡
終章 「攪乱」する思想としての地下出版 1 メディア文化圏としての「高級エロ」出版 2 軟派出版史を描き出す──メディア史研究への視座 3 「趣味的研究」のネットワーク──社会学領野への視座 4 本書の可能性と限界──地下出版界は、「知的共同体」たりえたか? 5 「教養主義の裏通り」の隘路、受け継がれる「好色の魂」
注 付録 昭和「地下出版界」関連年表――梅原北明とその周辺 あとがき 参考文献一覧 図版出典一覧 人名索引
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